拡張工事

今日も朝から雪が舞う。山陰の春はもう少し先になりそうだ。

ビニールハウスは無加温なので、日がささなければ温度は外気温とほとんど変わらない(さしてもあまり変わりはないが)。

気温が低ければ苗たちの成長もゆっくりで、したがってできる仕事も限られる。

そんな冬のあいだに行う大事な仕事がビニールハウスの補修や改良である。

ビニールハウスも雨風にさらされて、年とともに部材が錆びてきたり、ビニールが破れてきたりする。また、使っているうちに、使い勝手が悪い場所が出てきたりするので時間に余裕がある冬のうちに改良して、春以降に備える。

今年の仕事は苗を育苗する台が古くなってきたので、台の上面の竹を張り直し、あわせて拡張を行うことにした。苗を大移動したり、例年よりも大仕事となった。こんな仕事は他の季節ではとても行えない。
拡張工事
いままで台が少し狭めだったので、通路部分は広くて使い勝手はよかったものの、面積を有効的に活用しているとは言いにくかった。特にオンシーズンには、発芽した苗をポット上げしようとしても、場所が足りなくて困ることもしばしばであった。

そこで、今回は約60cm幅を広げることにした。スタッフの計算によると置ける数が2割増えるとのこと。実際出来上がった台を見てみると、予想していたよりも広い。

竹の台
緑色もまだ鮮やかに残る竹は見た目にもフレッシュでいい感じ。もう少し暖かくなるとこの上に続々と新しい苗が並ぶことだろう。

でも、きっと、あっという間にいっぱいになってしまうんだろうなぁ。

雪の日の作業は静寂の中で

先週末は、春を思わせる暖かさで気分もちょっとゆるんでいたのだが、今朝は一転して雪模様。
雪の日
気温はというと、さほど下がっていなくて零度前後。でも春の暖かさから引きずり戻された体にはとても寒く感じる。
雪の畑
畑もビニールハウスも雪に覆われた。

雨が降ると雨音がうるさいほどのビニールハウスの中なのだが、雪の日は一転して静寂に包まれる。

ビニールハウスの雪
雪の降った朝は静かだというが、上下左右が雪に囲まれた広い空間は、すべての音が雪に吸い込まれるようでなにか怖さを感じるぐらいの静けさだ。

ときおり、ビニールハウスから滑り落ちる雪の音にさえびっくりさせられる。周りが静か過ぎるので、自分がたてる音さえもとても大きく感じる。でも、それが悪いというわけではなく、かえって一つ一つの作業が丁寧になる感じだ。

そういえば先日、ネットで雪の朝のような静けさを作り出す耳栓の記事を見つけた。

デスクワーク時の耳栓愛用者としてはとっても気になる。

まだ発売は先のようだが、一度試してみたい。雪の日のハウスの中とどっちが静かかな?

白い巣箱

年明けに製作を開始した百葉箱(のようなもの)、8割がた完成して、いったんそのままになっていたが、これからまた気温も下がりそうなので早く設置したいところ。

アルミ
屋根のてっぺんの棟包みをどうしようかと材料を探していたら、壊れたアルミの角材が見つかった。ちょっとゆがんでいるが、ハンマーで叩いたり、万力で広げたりしてみた。
軒包み
屋根の上に乗せてみると割といい感じ。これでいこう。

そして、大事な塗装。
塗装
百葉箱らしく、ここは真っ白に塗装。売り物ではないので、少々塗りムラがあっても問題なし。たぶん、数年したら剥げてくるからどうせ塗りなおすことになるだろう。
完成
軒包みもビスで取り付け、本体はこれで完成。
土台
次は、固定する台の製作。少々の雨風ではビクともしないよう、しっかりと杭を打ち込み、支えを取り付ける。
固定
幸い、ベースになった鉢カバーには足が付いている。足の部分に穴を開け、板で挟むように針金で固定しておく。修理や改造するときの着脱も容易だ。
巣箱
これで全て完成。ここまで手をかけたのだから、圃場の飾りにならないよう、こまめに気温の記録をつけねば。

ところが・・・
畑の真ん中に突如現れた白い物体はとても目立つ。

早速、近所の人に
「鳥の巣箱ができたね〜」
と言われてしまった。

ま、そう見えるわな。
鳥の巣箱になってしまわないよう、しっかり活用したい。

消耗品

農作業では色々な消耗品が必要である。用土や肥料をはじめ、紐や支柱など、数えていったらきりが無いが、比較的高価な部類に入る道具類もけっこう多い。

むろん、滅多に使わないものに高級品を使う必要は無いが、毎日使うようなものや、精度が求められるものはすこしぐらい高くても、気持ち良く作業ができるし結局は元がとれる。

ときには安いものをこまめに取り替える方が良い場合もあるので、使う頻度や必要とされる精度、作業の重要度によって選ぶようにしている。とはいえ、消耗品の部類に入るものでも、自分は基本的に、100均の商品とは相性が悪いようで、購入してがっかりすることが多く、手を出さないようにしている。

しかし、長い間、どちらにも決めかねていたものがある。それが草刈機の刃である。
草刈り
シーズンは限られているとはいえ、草が勢い良く伸びる季節には週に1回以上の草刈りを行う。

圃場の周りは斜面有り、凸凹あり、石が露出していたり、砂利がある場所など、草刈りがしにくいところが多い。時々、石に刃が当たって、「キーン」という不快な音と共に火花が飛ぶこともよくある。そんな場所なので、草刈機の刃は傷みやすい。

その昔、草刈機を手に入れた頃は、現在のようなチップ入りの刃はまだ高価で、鉄板の先が削られて一枚の刃になっているタイプだった。それでもけっこう高かったので、時々ヤスリを使って研いでいたりした。手間ばっかりかかって、その割に切れ味は悪かった。

その後、刃先にチップがついたチップソーが出回るようになってきた。「かなりよく切れるし、耐久性も良い」と聞いたが、一枚4千円だと聞き、手が出なかった。いつしか、2千円台のものが普及してきて、使うようになったのだが、その頃から、一枚千円を切るような激安の刃がでてきた(もちろん耐久性はひどかったが)。

種類も増えてきて、毎回ホームセンターで、どれを買うか迷うようになった。チップソーも、安めのものは石に当たってすぐにチップがとれるので、激安のものをこまめに替えるのも一つの選択肢だった。実際何枚かワンセットになったものだと、一枚が500円を切るようなものも出てきた(もしかしたら今なら100均にもあるかもしれない)。

ただ、こまめに替えていると、使い古しの刃がどんどん溜まり、あまり気分が良いものでは無い。なので、「荒地用」と書いてあるような、耐久性がある、やや高価な刃を使ってみたりするのだが、これも一年はもたない。最初の数回は文句の無い切れ味なのだが、徐々にチップが欠けていくうちに切れ味は落ちていく。一月ぐらい経つと明らかに切れ味が劣ってきたのを実感するようになる。

結局、どちらか結論がでないまま数年が経った。その間、激安刃と高級刃の間を行ったり来たりしていた。

ところが今年の春、いままで見なかったタイプの刃をホームセンターで目にした。

一見すると、これで切れるんかいな?という感じだ。それでも値段が2千円を切る程度だし、「石に強い」という文句につられ、試す価値ありと、一枚購入してみた。

草刈機の刃
パッと見には、切れそうに見えない形状だが・・・

実際使ってみると、切れ味は悪く無い。耐久性はというと、これが素晴らしい。いつもならチップが飛んでしまうような石に強く当たって火花が飛んでも、後で見ると刃は大丈夫。

理屈はよくわからないが、春に購入して、そろそろ草刈りが終わるシーズンなのに、それほど不満を感じ無い切れ味である。

どうやら石が多いこの場所で草刈りをするには最適の種類のようだ。障害物が少ない畑や、田んぼの畦のようなところなら、一体どれぐらい長く使えるのだろうかと思うほどだ。
草刈機の刃
あまりに気に入ったので夏前にもう一枚手に入れたぐらいだが、今年は結局春に購入した一枚でシーズンをほぼ終えることができそうだ。

「消耗品」ではあるが、「消耗品」とは呼びたくない満足感を与えてくれた。開発した人に拍手を送りたい。パチパチパチ。

ポイズンリムーバー

ここ数年、10月に入ると休日返上で親戚へ秋の番茶摘みの手伝いに向かう。

夏までのお茶摘みは暑さが厳しくて辛いものがあるが、秋は比較的涼しくなってからなので、その点は楽である。

ただ、この時期はツツガムシ、チャドクガなど、危険な昆虫がいて厄介だ。天気が良い日には特にスズメバチに気をつけなくてはならない。

オオスズメバチはものすごい羽音にギョッとさせられるが、それほどたくさんはいないし、今のところ危ない目にあったことはない。

ところが、ちょうどこの季節、お茶の花が満開で、その花の花粉を目指してキイロスズメバチがやってくる。お茶を摘んでいるすぐそばでも花に潜り込んでは飛び出していく。小さめのスズメバチとはいえ、畑中、無数に飛び交っているので初めて見たら少しビックリするに違いない。

お茶の花
お茶の花

自分も最初は怖さを覚えたが、こちらから手を出さない限りは問題がないので今はあまり気にせずに作業を行えるようになった。

しかし、先日の作業ではついに被害者が出てしまった。

作業の手が足りなくて、スタッフの一人も手伝いに行き、摘んだお茶を運搬する作業をしていた。お茶が詰められた大きな袋をかついで運ぶのだが、運悪くこの袋にキイロスズメバチが入っていたようだ。肩にせおった袋の中から首筋を刺されてしまったのだ。

お茶つみ

すぐに応急措置をと思っても、ここは人里離れた山の中。まだ作業の途中なので、中断して戻るわけにもいかない。ファーストエイドキットも手元にない。とにかく、毒だけでも絞り出そうと、刺された箇所をギュッと爪で押し出すようにして毒出しを試みた。爪の跡がこれでもかというほど首筋についてしまった。

幸い、その後気持ち悪くなったり、呼吸が苦しくなるということもなく、無事加工場へ戻って薬をつけることができて胸をなでおろした。

本人は痛みを感じながらも「今日、お酒が飲めないのはいやだなぁ」なんて言っていたが、皆が、「首のところがすごく腫れるかも」とか脅したので、気が気ではなかったかもしれない。心配していたが、その後悪化することもなかったようだ。

こんなこともあったので、早速毒の吸い出しにつかう「ポイズンリムーバー」なるものを手に入れた。
ポイズンリムーバー
実は前からちょっと欲しかったのだが、ちょうどいいきっかけだ(ちょうどいい言い訳だ)。普段の作業でも蜂に刺されたりすることがあるので、あった方がいいだろう。

マンガや映画などでは口で毒出しをするというのがお決まりなのだが、自分一人だったり、そもそも汗ばんだ男の首筋に吸い付くのはためらわれる(咬んだものと緊急性にもよるが・・・)。首筋ならともかく吸い付くのがもっとためらわれる場所ということだってあるし・・・。

ポイズンリムーバー
刺されたところに押し当てて
ポイズンリムーバー
レバーをギュッと引く

試しに使ってみるとそれなりの吸引力だが、爪で思いっきり絞り出す方がいいのでは??と思うぐらいである。いずれにせよ、応急処置用だ。蚊に刺されたときには効くだろうか?ネトルに触れてしまったときに効果があると助かるんだけどな・・・など、期待もあるがやってみなければわからない。

ポイズンリムーバー
この程度の跡がつく(何度か繰り返すべきだとのこと)

さて、明日の休日はまたお茶摘みである。ポイズンリムーバーが活躍しないことを願う。