よりどりみどり

年末より大雪に見舞われた山陰地方。一晩でこれほどの雪は初めての経験だった。

大学生だったころ、宮崎出身の友人に、「松江は冬、スキーを履いて登校するんだ」と言って本気にさせてしまったことがあるが、今回の雪ばかりはスキーが必要なぐらいだ。

普段はブーツ派の自分だが、ここしばらくは雪と泥まみれの日々が続きそうなので長靴を買いに出かけた。

年明け、開店するや否や、スコップと長靴はあらゆる所で売り切れとなってしまったと聞く。でも、それほど心配はしなかった。

予想は的中し、ホームセンターで、そこだけガラ〜ンとなってしまった長靴売り場には28cmの長靴だけが取り残されていた。まさによりどりみどり状態である。普段、大きな足サイズに悩まされ続けているけれど、たまにはいいことがあるものだ。

本当を言えば28.5cm、冬は厚めの靴下なので欲を言えば29cmのサイズが望ましい。残念ながら地方のホームセンターでは28cmが限界である。

さて、どの種類にしようかと迷った揚げ句、つま先が補強された安全靴タイプのものにした。どうせ間に合わせなので安いのでいいかなとも考えたが、親指の深づめが痛むこともあり、こちらを購入。

長靴

一日目から結構色々な所で足先をぶつけたので正解だったようだ。

重労働に限る

小雪が舞う寒い日となった。防寒をしっかりしてビニールハウスの作業へ出かける。しっかり着込み、首にはマフラー、ニットキャップで耳もしっかり覆って作業開始である。これらの防寒具、泥汚れの恐れが多いのでほとんど家族からのお下がりだったり、甥からの「お上がり」だったりする。

最初、苗の整理や移動をしていたが、今冬の冷え込みにまだ体が慣れていないのか全く暖かくならない。これでは埒が明かないのでちょっとハードな仕事に変更。先日から行なっている通称「タネハウス」の大掃除の総仕上げ、床のデッキブラシ掛けを行なった。

グラウンドシートに苔がついているのでデッキブラシで力いっぱいこすり取る。あっという間に体に熱がこもり、マフラー、ニットキャップも取るはめに。メガネまで曇ってきた。外は雪だと言うのに。

やっぱり寒い日は重労働に限る。想像すると水を使った作業は寒そうだが、実際に行なってみると勢いが勝ってむしろ寒さは感じなくなる。

午後は事務所でデスクワークだった。暖房が効いていると言うのに首もとが寒く、手足まで冷えてきた。午前中は不要となったマフラーをまた取り出すはめになってしまった。

マフラー冬はやはり外で重労働のほうが体には良いようだ。

ドンゴロス

新そばの季節だから・・・というわけではないけれど、新しいそば殻が入荷した。殻とはいえ、そこそこ粉も残っていると言うわけで、乾いた蕎麦の香りが心地よい。

そば殻と麻袋

そば殻はもちろん用土にブレンドしたり、マルチに使ったりとこれから大活躍してもらうのだが、外側の麻袋も中身に負けないぐらい活躍する。

もともとは収穫した蕎麦の実が詰められるための袋で、今こうやってそば殻を詰めるという二番目の仕事についている。ところがうちに来ると、まだまだいくつもの仕事が待っているのだ。

中身が使われて空になった袋は、今度はブレンドした用土を入れておくのに使われる。通気性の点ではビニールの袋と比べ物にならないので、中の有用微生物にも安心である。もみ殻を摘めておくのにも良い。以前は専用のモミガラ袋(ビニール製)を使っていたが、半年もすれば劣化して破れて始末に負えなくなる。麻袋ならまずそう言ったことも無い。

冬ならば、肥料作りをする時、やはり通気性のある覆いとして欠かせない。肥料が出す水分も吸収してくれるのもポイントである。

土を詰めているとそのうち穴も開いてきて袋として用をなさなくなってくる。次は、長靴の泥落としマットとしてビニールハウスの入口に敷かれる。また、主に冬場、ハウスの補修などで金属を切断したりする作業を行なう。そんな時、鉄くずや火花から床のシートを保護するのにも欠かせない。

ここまで使うと、もう所々がほつれ、ボロボロになってくる。しかし、まだ役目は続く。袋の脇を切って開くと縦長の布状になる。これを畑へ持っていけばマルチ、そして通路用のシートになるのだ。

さらに季節をひとつかふたつ過ごせば、土に戻り、畑の養分としてすべての仕事をようやく終えるのである。

ところで、麻袋は、通称ドンゴロスとも呼ばれる。我々の世代だと、ドンゴロスと言えば初期の宮崎アニメに出てくる脇役がまず思い浮かぶのだが、この麻袋と同じようにこき使われてばかりいるキャラであった。
「ドンゴロ〜ス!!」
「へ〜い」
となるとこき使う側の私はダイス船長?

LEDライト

秋分の日をむかえるようになり、日が短くなったことをひしひしと感じるようになってきた。夕方、まだ仕事が残っているのに早々と薄暗くなってしまう。

先日など、夕方用事があって圃場に行ったら日中の暑さのせいで、予想以上に苗がしおれていた。すぐにでも水やりをしなくてはならなかったが、一旦家に戻らなくてはならなかった。

用事を済ませ、圃場へUターン。圃場には照明設備はない。さすがに暗闇での水やりは困難なのでヘッドライトとミニマグライトを携えてゆく。もうすでに真っ暗である。

念のためミニマグライトも持ってきて良かった。ヘッドライトだけでも充分見えるが、細かい所を照らし出す時、左手のマグライトがあると無いとでは大違いだ。2時間近くかかる水やりだが、どちらもLEDなので電池切れで明りが消えてしまう心配はない。この頃はエコ的な側面から注目されるLEDだが、こういうシチュエーションでは誠に心強い。

ヘッドライトとマグライト

ミニマグライトは、普段は自転車で使っている。暗くなる時間帯にはあまり乗らないのでライトをつけることもめったにない。慌ててライトをつけたら電池が切れかかっていてあっという間に光量が落ちることが度々だったが、LEDに代えてからは安心して運転が出来るようになった。

ヘッドライトは、子供が寝てしまった後の読書用。本来のアウトドアでの仕事を終え、また枕元へ戻っていった。もう少し寒くなれば、暖かい布団の中で読書の秋を楽しめそうだ。

民具

夏野菜もそろそろ終りが近づいてきた。キュウリはもうすでに片付けてしまったし、オクラもそろそろおしまい。ツルムラサキもさすがに飽きてきた。ナスはもうちょっと頑張れるかも知れない。猛暑のさなかさっぱりだったミニトマトがようやく復活してきた。粒は小さめながら味はまずまず。でも、暑い時期に楽しみたかったなぁ。

ザルと野菜

収穫は、把っ手付きのザルを片手に。このザルは、とある酒屋さんに訪れたとき、ちょうど納屋の片付けをしておられ、その時に出てきたものを譲り受けたものだ。どれぐらい前のものか不明だがとても丈夫で、もらってから10年近く経つのにザルの下の足の部分が壊れただけで(同じような竹で簡単に修理できた)、愛用させていただいている。プラスチックのカゴに比べると野菜を入れた時の収まりも良いし、野菜の色も映える。野菜たちも何となく気持ち良さそうである。

ところで、先月、子供が通っている小学校で校舎改築に伴う備品や器材の大移動が行われた。椅子や机を暑さの中、汗にまみれて運搬した。小学校には「地域の歴史の展示コーナー」みたいなものがあって、昔の調度品や、かつて稲の脱穀に使った道具など、昔使われていた民具が集められている。その中に、例のざると寸分たがわないものがあったのである。

民具として展示されるようなものが未だに現役とは・・・。昔の丁寧な仕事と素材の強さに改めて感心せざるを得なかった。今になって良いものを貰ったなあと思うのである。