たどり着く場所

園芸作業には、結構いろいろな道具が必要だ。ハサミやジョウロから始まって、細かいものまで数え上げれば膨大な数になるだろう。

そんな道具たち、はじめの頃はもちろん市販品を購入して使うのだが、そのうち何かしら不満な点が出てくることが多い。

買い替えたり、他の道具と組み合わせたり、改造したり。行き着くところは自作である。

例えば、種まきや発芽した種子を小さいプラグに植え直すときの作業。

一般的には指でそっと行なうか、さもなければピンセットのようなものを使うところである。

ピンセット
片側にはご丁寧に移植用のヘラまで付いているのだが・・・

ご丁寧に、そういう作業のための商品も売られている。相当昔に購入して、最初使っていたのだが、なんとなく使いにくくて、「買ったのに使わない」アイテムになってしまった。ま、他にもたくさんあるんだけど。

そのうち、ピンセットを使わず、鉛筆を使うようになった。鉛筆のサイズというのは子供の頃から「字を書く」という細かい作業を続けてきたので、同じような細かい作業をするのに都合が良い。ラベルに記入するときに使っているので、いつも手元にあるものだし。

だが、鉛筆では先端の尖り具合や、ちょっとした使い勝手に満足がいかなくなり、似たようなサイズに竹を切ったものを使うようになった。

ヘラ

そして現在、更に使いやすいよう徐々に改良を重ねてこんな形にたどり着いた。
へら
先端が尖った方は、発芽したばかりの細かい種子を分けたり、小さな種子や発芽をプラグに入れるのに役立つし、平たい方は種まきの穴を開けたり、種子を蒔いた後に土をよそうときにちょうどいいようにしてある。

へら

竹を削っただけの極めてシンプルな形なのだが、上記のピンセットよりもはるかに使い勝手が良い。

ところが、今年、これと非常によく似た製品を見つけてびっくりした。

PCを分解するときに使うへらである。「Spudger」と言うらしい(なんて読むんだろう)。

ノートパソコンのハードディスクを入れ替えようとしたときに、分解解説のしてあるサイトで推奨されていて購入。

商品紹介の画像で見たときも「似ているなあ」と思ったのだが、手にしてみると更にびっくり、自作のへらとサイズや形、持った具合までがよく似ていた。尖った先と、平たくなったもう一方の側といい、驚きであった。

もちろん素材は全然違うのだが、発芽した苗の移植と、PCの分解。細かい作業には変わりない。突き詰めていくと同じような形にたどり着くのだろうか。

このPC用のへらも、誰かが市販品に不満を持って作り出したのではないかと思うとなぜか親近感が湧いてくるのである。

八十五歳の薔薇

昨年のことである。定期的に庭づくりに伺っているお客様から、庭のレイアウトを変更したいので、大きなバラを移植してほしいという希望があった。

相当古い株のようだったので、躊躇したが、「万一うまく行かなくてもOK」ということで冬になるのを待って移植した。三人掛かりの作業で掘り上げ、移植。根もまずまず良いコンディションだったのであまり心配はしていなかった。

八十五歳の薔薇

春になり、株元や太い枝からもばきばきと新芽が伸び始めて一安心。

老木からの新芽

「ほっとしました」
と、お客様に伝えると、
「いやあ、実はこの薔薇はね」
と、由来を話されたのである。

それによると、先般 100歳間近でなくなられたおじいさんが子供の頃、川に(!)流れて来た株を引っ張り上げて植えたのがスタートだという。おじいさんの年齢から考えると少なくとも八十五年は経っているはずとの話。

先にそれを聞いていたら怖くてあんな大胆な移植はできなかっただろう。この頃、高齢の患者の大手術が成功!とかいう話題を時々メディア等で目にするがまさにそんな感じである。

もちろん種類は不明だが、やや中輪の花をかなり咲かせているのは一度確認している。今年、どんな風に咲かせるのか今から楽しみだ。

移植

圃場のビニールハウスの横、普段何も使っていないところにボリジが生えるようになって数年、今年もこぼれ種で次の株ができはじめている。

ボリジ

ミツバチをよく呼び寄せてくれるので果樹などもある畑のほうに常駐してくれればいいのに、なぜかこの場所がお気に入りのようだ。風当たりは強いし、石も混じる全く手入れもしていない荒れ地である。

一般に移植を嫌うと言われるボリジでも、まだ本葉がでたてぐらいだと移植しても活着しやすい。上の写真のようになってくると徐々に難しくなり、冬を越して株が大きくなるとまず移植はしない方が安全だ。

新芽を見つけた先月ぐらいから気になっていたが、なにかと忙しくてつい後回しにしていた。ようやく今日、とりかかる機会が到来したのである。

ボリジ

もう小さい株が少なくなっていたが、それでも雑草に隠れて程々のサイズのものが見つかった。掘り出しはそれほど難しくは無い。ただ、根の上の白い部分は柔らかく、丁寧に掘り上げないとポキンと折れてしまい、そこから腐ってしまう。少しだけ慎重になる。

こぼれ種でこの場所にも100株以上あると思う。それほど良く増えてくれるのに畑のほうはさっぱり。カモミールと同様、ボリジも育つところには雑草のごとくよく増えるがちょっとお気に召さないとなかなか増えない。お客様からの話などを総合すると、カモミールはやや砂質でさらっとした場所がお気に入り、ボリジは、良く耕した畑のようなもっと細かい泥のところで良く増えるようだ。うちの畑は条件は悪くないと思うのに、こちらの思い通りにはなってくれないものだ。