もっぱら観賞用”2″

前回に引き続き、今年から「観賞用」に加わった植物を御紹介。

ヨーク・アンド・ランカスター

おそらく、20年近く鉢のままで生き永らえながら、おそらく初めての開花であろう。ローズの「ヨーク・アンド・ランカスター」である。

すでに、いつ、どこで入手したのかさえ定かではない。どうしてこの株を手に入れようと思ったのかという動機さえ今ではわからない。

たしか、十年以上もの間、5号鉢ぐらいに押し込められて窮屈な思いをしてきたようで、もちろんその間、蕾を付けることさえままならず、半分ミイラのようになりつつも良くここまで頑張ってきたものだ。

ここ数年で、ようやく大きめな鉢と、比較的まともな土で植え替えられ徐々に株が充実してきた(とは言え、まわりのハーブの親木たちと同様、それほど肥料は多くないハーブ用の土なのでここまで成長したことを褒めねばならない)。実を言えば、咲くことをたいして期待していなかったのだ。ゴメン!

さすがに花を見せたとあってはその意気をくみ取り、もう少しましな待遇にしてやらねばと思っている。そうでなくても、さすがはダマスク系のオールドローズ。この見事な香りをかがせてくれたお礼だけでもしなくては。

棘との戦い

天候が回復して庭作業を集中して行なっている。このところはお客様のお庭のローズのお手入れ。冬の剪定と蔓バラの誘引である。

知り合いのロザリアンは鋭い刺を持つ蔓バラの誘引も全て素手でこなすと言うので感心する。自分もゆっくりと手間をかけて慎重にやるのなら素手でできるかも知れない。でも、お客様の前であまり悠長に作業を進めるわけにもいかないからこの作業に欠かせないのが革の手袋だ。ローズの強力な棘に素手で立ち向かっていけるほど手の皮は厚くないし。

革の手袋

もう5年以上使っている革の手袋も所々破れたりしてボロボロである。足も大きいが手も大きい自分は市販されているLLサイズの手袋では小さくて仕事がし辛い。指の股(というのかな)のところまでしっかりと入らないのだ。

愛用している皮手袋はLLBeanから個人輸入したものでもう4代目ぐらいになる。指の長さも充分だし、厚手で丈夫。しなやかで使いやすいのだ。だが、残念ながら今のカタログにはこのシンプルなデザインのものは載っていない。次の候補が見つかるまでは直し直し使う事になりそうである。

まだまだ頑張ってもらわなくてはならないのでローズのお手入れが一段落したら破れ目などを補修してやるつもりだ。

こんな厚い手袋をしていてもローズの棘は容赦なく手を突き刺してくる。紐で誘引するときにはさすがに手袋は取らなくてはならないし、終ったときには手は傷だらけ。夜、お風呂に入るときが大変なのである。

赤い果実

前回のジャスミンの果実の色はどう見てもあまり美味しそうではない。鳥も同じ食べるならばこちらの方を選ぶのではないか。

スィートブライアーローズ

スイートブライアーローズの果実である。圃場の一番隅に植えてあってほぼ放置状態。夏は草に覆われていてほとんど見えないが、雑草が枯れる冬には姿を現してくる。ちょうど果実も色づき、目に留まると言うわけだ。

肥料もやらないし、剪定もしないのにいつの間にか2メートル近くにまでなり、そこそこ花も咲かせているようだ。こんな隅に植えてしまってはせっかくの葉の香りも楽しめないし、ちょっと可愛そうである。ドッグローズよりも葉の感じは繊細で見た目も悪くない。もうちょっとしかるべき場所に植えれば良かったと後悔している。

さて、この果実、以前、収穫して種子を蒔いてみた事があるけれど、はかばかしい結果は得られなかった。ここは鳥たちのために残してやるのが人情ってものだろう。

タランチュラ出没!?

昨年のちょうど今ごろだったと思う。普段お庭の手入れをさせていただいている方から電話がかかってきた。

「庭のバラに、大きな青い蜘蛛がいて、気持ち悪くて・・・」
お年を召された女性の一人暮らしなので、なおさら不安なのだろう。すぐに伺うことにした。

お庭に向かう車中でスタッフと「大きな青い蜘蛛」とは一体何かという話になった。電話の話によると縞模様もあるという。

「もしかして、タランチュラとかの毒グモとか?」
「このごろは木材とかについてやって来るのもいるらしいし・・・」
「こんな島根に?」
と、喧々諤々であった。でも、いざと言う時に誰が捕獲するのかという話には決してならなかった。

到着して恐る恐る問題のバラのところに行ってみると、正体はゴマダラカミキリであった。鮮やかなブルーと、大きな触角。青い蜘蛛に見えても仕方がない。結局この時は5匹も捕まえた。残念ながらバラの枝は既に何箇所もかじられていてその先の花芽がダウンしていた株もあった。

今年も同じ庭で、やはり同じようにゴマダラカミキリを見つけた。少し早かったのか一匹しかいなかったし、バラの被害も最小限だった。

ゴマダラカミキリ

小さな頃は、宝石のように見えた体の色も今ではあまり愛着は湧かない。昨年は知人宅の小学生にプレゼントしたのだが、今年は山に囲まれた圃場に連れて帰って放してやった。

11年目の香り

ハーブを初め、色々な植物を育てている圃場には、何年もその正体がはっきりしない株もたくさんある。成長もせず、花も咲かずとなるとなおさらこちらの関心も薄れ、つい目も手もかけなくなってしまう。それでも捨ててしまうわけには行かず、ズルズルと毎年植え替えたりしているのである。

そんな株の一つ、ガリカローズが今年花を咲かせた。記録を調べてみたら、種子を蒔いたのは98年の11月。11年目にしてようやくである。たいていローズの種子は種子を蒔いても発芽まで良くて半年、たいていは1年がかりである。確かこの種類も時間がかかり、発芽数も少なかったと思う。

ガリカローズ

問題はその後である。ポット上げしてから非常に成長が遅かった。何か問題があったのかも知れないにせよ、何度植え替えてもひょろひょろと細い枝が数本伸びるのみ。同じ原種でもドッグローズスイートブライアーローズはぐんぐん伸びるのに比べるとあまりにも貧弱であった。

そのため、ポットで過ごす期間が7,8年はあったのではないか。良く生き延びてきたものである。

また、ガリカといえば、思い浮かべるのはアポセカリローズ(Rosa gallica officinalis)である。ハーブの本でも良く取り上げられるオールドローズだ。あまりにも名高いこの種類に対してどうしても原種であるガリカへの関心は薄らいでしまう。とりあえず花を見てみようかという気分だったのである。第一、種子なので咲いたところで本物か?という疑惑はいつまでもつきまとう。

さて、2年ほど前?に大きな鉢に移し、そのまま忘れていた。いつの間にか蕾がつき、いつの間にか開花。まさにローズピンク。香りはといえば、確かにオールドローズを思わせる品のある深みの有る香り。ただし、株も小さいのか、園芸種のように周りに漂うほどではなかった。種子からなのでそこそこ個体の性質に幅があることも考えられる。

さて、今後この株をどうしようか。11年かけてここまで来たので、これからもゆっくり考えても良いかもね。