土との相性

いよいよ7月も終わろうというのに、一体夏はどこへ行ってしまったのか。

湿度も高く、日差しも少ないので、苗のポットにも例年になくうっすらとコケが生える。それ自体が苗の生育に大きく影響を与えることはないのだが、土の表面が黒っぽく見えるため、水が充分足りているように見えてしまう。そのため、つい水やりの際に見逃してしまい、次に見た時には苗がぐったり・・・なんてことが良くあるのだ。

もちろん、出荷する際にも見栄えが悪いので、取り除く作業が必要になってくる。手で取り除くのには限界があるので、ある時、金属製の移植用ナイフ(とでもいうのかな?)を見つけて使ってみた。

買う時には、「これはぴったり」と思っていたのだが、実際に使ってみるとどうも使い勝手が悪い。刃の部分が硬いので、土の深いところまで削れてしまう。握り具合も良くない。夏は熱く、冬は冷たくて、手に取るのも嬉しくない。便利かなと思った反対側のピンセットも邪魔なだけであった。

へら

あまりの使い勝手のひどさに呆れ、しばらくして竹でへらを作ってしまった。素材はすぐ脇の竹林から調達。適当なサイズに切って割り、へら状に整形。ついでに火であぶって先端部に緩いカーブをつけた。

目的に合わせて作ったので、使い勝手の良さは折り紙付き。何と言っても竹の微妙な柔らかさが、苗の株元を掃除するにはぴったりなのである。土との相性が抜群で根も傷めにくい。

へら

金属製の方はあっという間にお役御免となってしまった。

毎日使えばすぐに駄目になるのかなと思っていたのに、一年以上使っていてもあまり傷んだ様子も無い。竹って丈夫なものだと改めて感心している。

カスタマイズ

圃場の日々の作業でなくてはならないのが一輪車。いわゆるネコ車である。当然、通称は「ネコ」。
「おーい、ネコ持ってこ〜い」
となるのである。

畑の用土や、植え替えで出た古い土、ついでに大きめの道具などを運ぶのにも欠かせない。

ところが、上部の土を入れる皿の部分は案外やわで、きちんと手入れをしないと数年で錆びて穴が開いてくる。初代のネコ車も相当酷使したのであっという間に穴が開いてしまった。それでもフレームや車輪はしっかりしているので2代目を購入した時に少し改造して苗を運ぶ専用車にしたのである。

ネコ車

角材で土台を作り、その上に竹を割ったものを渡して支えにした。いまでは苗などを運ぶアルミのネコ車も市販されているがこれで充分である。

さすがに数年使うと、上部の竹が端から折れてしまい、そろそろ修理が必要となってきた。

本格的な夏になったら、徹底的に直してやりたいと思っている。夏の宿題がまた一つできた。フレームも所々錆びているので錆も落としてやろう。ついでにチェレステカラーに塗ってやって、ビアンキのバーテープでもハンドルに巻いてやるのは・・・さすがにやりすぎだろうか。

水やりの友

夏の仕事で最も大きなウエイトを占めるのが水やりである。梅雨が明けると天候によっては一日2回水をやる必要が出てくる苗もある。

ビニールハウスの中で長時間の水やりは実際、なかなか重労働である。体力はもとより、精神力も疲弊させられる。かといって、なんせ植物の種類が多いからスプリンクラーで一気にという訳には行かない。

そのため、良い蓮口を使うことは夏の水やりを楽にするための絶対条件なのである。かつてはホームセンターで売っているような数百円の蓮口や、先端を回転させるとシャワーからジェット、噴霧になるようなものを使っていたが、やはりそれなりの品であった。そんなとき、有る方から少し上等な蓮口を紹介していただいた。当時一万円を切る価格だったように思うが、実際にそれほどの価値があるのか不安であった。

しかし使ってみて納得。充分な量の水が短時間でしかも優しく植物にかかる。しかも均一に特定の範囲にだけ水が注がれ、無駄に飛び散ることがない。植物に優しく、時間も、水も節約できる。以来手放せなくなった。商品名は「散水ノズル きらら」 である。今では色々なところでてに入ると思う。

散水ノズル きらら

本当はもう一つ大きなサイズが欲しいのだが、今使っているポンプの圧力ではこのサイズが限度だろう。

唯一難点は、素材が銅のため落としたりぶつけたりするとへこんでしまうこと(写真のノズルもだいぶでこぼこである)。大事に扱わないとシャワーの質にも影響してくる。

また、もともと水量調節などはついていないので、手元に市販の水量調節パーツと、外すと水がストップするコネクターをつけて少しだけ利便性を高めて使っている。

たくさん水やりをする人には是非おすすめしたい。水やりが楽しくなりますよ。

トカゲの足音

ガーデニングが心底好きなひとは、孤独を苦にしないひとが多いように思う。お客さんからも「一日中誰とも話さずに庭仕事に没頭できる」という話を良く聞く。

普段の作業も役割分担がはっきりしているので集中的に植え替えをしたり、何か大きなものを作ったりなどの特別な時以外はほとんど個人の仕事である。

広いビニールハウスで一日中一人で作業することも希ではない。誰かいれば別だが、そんな時、不意に背後から物音がするとびくっとさせられる。

トカゲ

夏にかけて驚かせてくれるのはこいつ、トカゲである。真夏の暑い時にでも、何をしているのかビニールハウスの苗が並ぶ台の下を行ったり来たりしている。地面にはシートを敷いているので余計に「カサカサッ」と言う音がしてびっくりさせられるのだ。

彼には無論罪は無い。ビニールハウスでは毎日のように見かける顔見知りのような間柄だ。トカゲを見て「キャッ」なんて黄色い声を出すひともいるが、全く気にならない。むしろ、お互いに邪魔をせず危害も加えず非常に良好な関係を保っている間柄といえそうだ。

なぜか写真の彼はしっぽの先が切れていた。しっぽが切れたトカゲは仲間からも阻害されやすいと何かで読んだ。彼にも表には出さない悩みがあるのかも知れない。

ちなみに地面に敷いているシート、なかなか良い製品である。非常に丈夫で敷いて5年以上たち、毎日歩いているのに劣化も少ない。水も通すし、とりあえず草取りをしたくないために敷いたところ予想以上の効果を上げている。個人的な園芸では使うことは少ないかも知れないが、良いものなので紹介しておきたい。商品名はダイオグランドシートである。ただ、切断するとその端はほつれやすいので注意が必要だ。

寒冷紗

日差しが強い時期、ビニールハウスでは遮光シート(寒冷紗)を張る。植物のためには早くとも梅雨が明けてから張るのが例年の習わし。まだまだ先である。

それに先駆け、か弱い我々用の遮光シートを作業スペースの上に張った。ごく薄い一枚のシートとはいえ、有ると無いとでは暑さがものすごく違う。「木漏れ日の下」と言うほどの風情はないにせよ、今から秋初めまではこれなしではやっていけないほど重宝している。

寒冷紗

非常に優れ物のこのシート、遮光率もいろいろラインナップされており、用途によって使い分ける。種を発芽させたり、挿し木を管理するビニールハウスでは年中軽く遮光されるタイプで覆って乾燥を防ぐ。遮光度合いの高いタイプは真夏、ポット上げしたばかりの苗を育てるビニールハウスで短期的に使う。同じ時期、大きな株のハウスでは薄い遮光シートである。

薄くて軽く、小さく畳めるのでパーソナルな園芸でも活用の場は多いと思う。

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