人事を尽くせば

数年に一度の寒気が流れ込んでいるらしい。

朝はそれほどでもなかったが、午後からかなり雪が強くなってきた。この冬のピークになりそうだ。

大雪の恐れがある日は、雪がすこしでも滑り落ちやすくなるようにとビニールハウスの中にストーブを灯す。

ストーブ

今日も夕方、ストーブをつけに行ったのだが、午後からの雪で、すでにビニールハウスの上に10cm弱も積もっていた。

時間的にこれからどんどん気温も下がるだろうし、一度雪を下ろしておく必要があると判断した。

こんなこともあろうかと、出かけるときにこの冬の秘密兵器を車に積んでおいた。

ひとつは、伸縮可能なアルミポールのついた窓拭き。高い窓などを下から拭くときに使うものだ。軽い上に長さも調節でき、先端のガラス拭きのところが柔らかく、ちょうど雪を引っ掛けやすい形状になっているのでビニールの上の雪を引きずり落とすのにはぴったりだ。もちろん、メーカー非推奨の使い方なので、真似しないように。

窓拭き
雪を引っ掛けるようにして引っ張ると滑り落ちる

降り続く雪で、ビニールハウス2棟ほどの雪下ろしをしたところで、雪が深くなってきて歩きにくくなってきた。

ここで、もう一つの秘密兵器の登場。カンジキである。おそらく松江あたりの人はここが雪国であるという意識はない(僕もない)だろうし、カンジキを履いている人など見たことがない。

昨年の大雪のとき、深い雪の中を移動するのに往生したので、秋に通販で購入しておいたのだ。この冬は出番はないかもと思っていたが、買っておいてよかった。正直に言うと、使うのをすこし楽しみにしていたのだ。

買ってすぐ、一度だけ装着したが、そのときを思い出して「なんとなくこんな感じだったよな」という程度で長靴に結びつける。

軽くてつけているのを忘れそうだ。歩いてみると、なるほど、非常に楽である。一年に一度しか使わなくても持っていて損はない。

カンジキ

カンジキをつけてなおさらスムーズに作業は進み、30分ほどで完了。カンジキはすこしずれていたが、全くぐらつきもなかった。ジャパニーズスノーシューズ、ワンダフル!!

ストーブもつけたし、秋には全てのビニールハウスに支柱も入れている。人事は尽くした!これでつぶれるような雪が降るようなら諦めるしかないので、今夜もぐっすり寝ることにしよう。

労働か、スポーツか

引き続き、仕事の合間をみては薪づくり作業を続けている。

切り倒した大木を、重機で無造作に積み重ねていくのを昨年遠くから見ていたが、実際に近くで見ると「必要な木をどうやって切って取り出すべきか」と頭の中が真っ白になってくる。

薪
積み重なった木々。雪の降る前。こう見ると簡単そうに見えるのだが・・・

いままではすでに倒れていた木や、間伐する木を一本一本倒していたので、こんなに積み重なっていることはなかった。重機ならではの仕事である。

重い木が積み重なっていると、変な方向に力がかかってたわんでいる木も多い。安易にチェーンソーを当てると跳ね返ってきたり、滑り落ちてくることもあり、大怪我の危険性も十分にあるので焦りは禁物だ。

足元も決してよくないので作業しやすい場所から上手に作業場を広げながら進めていく必要もある。

また、輪切り(玉切り)にした幹を楽に運び出せるよう、スタートする場所や、切っていく方向にも気を配らねばならない。行き当たりばったりではうまく行かないのだ。結局取り掛かるまでに現地を3回は見に行っただろうか。自然を相手に複雑なパズルをしているような感じだ。

木々
雪が降って足元も厳しくなった。

作業を始めると、真冬とはいえ、汗をかき、心拍数も上がる。メガネも曇ってくる。疲れとともに判断力も鈍り、腕や肩が痛み始めるとつい作業も雑になりがちだ。そんな時にトラブルが起きるものだ。

積み重なった木
複雑に積み重なった木のどこから手をつけるか。竹も混じっていてなお厄介。

焦らず、マイペースで慎重に。ぬかるんだ足元で重いチェーンソーを使うので腰を痛めないように姿勢にも気を配る。

時々作業しながら、労働というよりもスポーツのような気がしてくる。

そもそも、これでお金がもらえるわけじゃないので、スポーツと割り切った方が楽しいに違いないしね。

近いがごっつぉ

大寒も過ぎ、明後日は節分。春の気配を感じたのか、ブルーマロウの種子も発芽を始めた。いろいろな種類があるハーブは、発芽したばかりの双葉だけでは判断できないものもあるが、ブルーマロウはわりと個性的。双葉を見て確信できるのはありがたい。

ブルーマロウ

昨日今日と、圃場のすぐ裏の林で薪ストーブ用の薪の調達。この林は倒木防止のためこの冬、伐採作業が行われ、材木になりそうな太い木は搬出されたが、細くて用材にならないようなもの(といっても太いのは50cmぐらいある)が野積みにされていた。指をくわえて見ていたところ、山の持ち主の方から使って構わないとの声をかけていただいた。

伐採
宝の山。左上に見えるのが圃場

普段は車で一時間弱かかる親戚の山などで調達していたのだが、山陰の変わりやすい冬の天気、遠くまで出かけたはいいが、思わぬ天候の急変で、予定の半分も終わらないうちに帰り支度をせねばならないこともある。ところが、今回はなんと歩いて1分もかからない場所である。ちょっとした作業の合間などを使って作業ができるのはこの上なくありがたい。(Many thanks! > Mさん)

まずは野積みにされた木を割りやすいサイズにチェーンソーで玉切りしていく作業を行う。

玉切り作業
玉切り作業

何本も切っていくと徐々に刃のキレが悪くなってくるため、ソーチェーンをこまめに研ぐ必要がある。プロは現場で上手に研がれるのだが、未熟者なので足場が悪い現場で上手に研ぐのはまだまだうまくできない。こんなときも、圃場に戻ってきちんと作業台にチェーンソーを据えて刃を研ぐと、体も楽だし、下手でもずいぶん丁寧に研げる。

チェーンの研ぎ
作業台で行うチェーンの研ぎはとっても楽

もちろん、玉切りしたり大まかに割ったものを運ぶのもあっという間。普段なら、山から一輪車(ネコ車)でヨイショ、ヨイショと運び出して車に積み、1時間かけて帰り、また車から一輪車に載せ替えてようやく薪置き場に到着だ。ここなら、一輪車に積んでそのまま薪置き場に直行である。

一つ難点なのは、重機で山積みにしてあるので相当不安定だったり、邪魔な枝がかなりあることだが、そのようなことを言ってはバチが当たる。「近いがごっつぉ」なのである。

ちなみにこの辺りには「~がごっつぉ」という言い回しがある。「ご馳走」がなまって「ごっつぉ」だ。

なんでもすぐやるのが一番というときに「早いがごっつぉ」と言ったり、寒いときに、「なんにもないですけど・・・」と、温かい食べ物を出されたときに「いや~、熱いがごっつぉですわ」という感じで使う。

さすがに、以前店頭で20代の女性が商品を見て「安いがごっつぉ」とのたまった時にはのけぞったのだが。

少々足場が悪くても、天気が悪くても、太い木がなかなか切れなくても、チェーンソーが幹に噛んでも、「近いがごっつぉ」と唱えればノープロブレム。楽しく薪集めができそうである。