てんとう虫の春

春は駆け足でやってくるというが、もう3月という気持ちと、まだ3月という気持ちが入り混じっている。

畑の春はなおさら早い。気がつくと、雪が降る前に耕したところが一面草で覆われていた。

雑草

一方、ハーブたちはこちらの気も知らずにのんびりとしている。

ナスタチウム

冬の寒さで地上部がすべてふにゃふにゃになってしまったナスタチウムの苗も、ようやく一株、また一株と株元から新芽を出し始めてきた。株自体が傷んでいなければ今後徐々にその数も増えてくるのだろう。

そして、3月にもなると、山陰でも晴れの日が目立ってくる。その代わり、朝の気温は下がり、先日も白花クリーピングタイムがびっしりと霜に覆われていた。とはいえ、寒さには強いので全く心配はいらない。

ホワイトクリーピングタイム

昆虫たちもまだほとんど姿を見せないが、このあいだ、株分けしようとしたラムズイヤーからポトリとてんとう虫が落ちてきた。葉の陰で寝ていたのだろうか。

てんとう虫とラムズイヤーふわふわのラムズイヤーをお布団にするなんて、いい場所を見つけたものだ。

落ちてゴソゴソしたかと思っていたら、葉の付け根に頭を突っ込んでピクリともしない。まるで、朝お母さんに起こされたちいさな子供のような仕草に笑ってしまった。

本当は株を全部掘り上げて株分けしたかったのだが、自分がそうされたら・・・と考えるとしのびなくて、一部分はそのままにしておいた。またそれが広がったら株分けすればいいだけのことだ。てんとう虫の春ももうすぐやってくるだろう。それまで束の間、春の眠りを楽しんでほしい。

冬を彩るリーフたち(2)

過酷な環境に置かれると個性が現れてくるのだろうか、近い種類でも冬になると全く違う表情を見せるハーブも多い。例えば、育ち方や葉の形も良く似ている赤花クリーピングタイム白花クリーピングタイム。春夏ももちろん並べてみると赤花は葉色が濃いし、白花は明るい葉色をしているので分かりやすいが、冬はいっそう違いが明らかになる。

赤花クリーピングタイム

赤花の方は葉色が濃い赤みを帯びてくる(タイムの場合、冬に水を少なめにするとより顕著だ。実際この苗も一度水切れしかけたのでいっそう葉色が濃い。)。一方、白花の方は冬には黄緑色が強くなってくる。花は咲かずとも冬はひと目で見分けがつく。

マートル

普段は葉の大小ぐらいしか見た目がはっきりしないマートルドワーフマートルも冬はより見分けがつきやすくなる。マートルの方は葉にブチができやすく、冬はあまり見た目が宜しくない。

ドワーフマートル

一方、ドワーフマートルの方は全体が色づいてむしろ見た目は良好である。どっちも春になるといつの間にか元の濃いグリーンに戻っている。春は他のハーブに目が行っているので気がつかないだけなのだろう。

アイビー

普段はあまり好みではない(失礼!)アイビーも、今の時期はちょっと目を留めてしまう。ただ、これが壁や地面を埋め尽くしていたりするとちょっと辟易してしまうかもしれない。
アジュガ・チョコレートチップ
同じく地面を埋め尽くしているとちょっとうんざりしてしまうアジュガはどちらかと言えば好きな方ではないが、チョコレートチップは控えめな感じが好感が持てた。葉は小さめではあるものの、冬の葉色は同様に鮮やかである。花もまた控え目なところが良いのだ。

タイムの花壇

昨年、花壇作りをさせていただいたお客様の家に伺った。カナリーキヅタで覆われていた花壇を整理してタイムを中心に再構成したのが昨年の夏前であった。

いま、何種類か植えたタイムが順番に咲き出している。最初はイブキジャコウソウ、続いてキャラウェイタイム、徐々にレイタータイムも咲きはじめている。まだ蕾だが、そのうち白花クリーピングタイムが楽しめるだろう。

タイムの花壇

ちょうど椅子に座ると程よい高さに目線が行く。このような花壇なら、もっと様々な花を色とりどりに植えたくなるところであるが、あえてタイムを中心にして、補助的に何種類かのハーブを周りに植えた。

この花壇は南向きのテラスの上にあるため、驚くほど風通し、日当たりがよい。松江では蒸れに注意が必要なタイム類もトラブルフリーで育てることができる。

キャラウェイタイム

うちの圃場では徒長しやすいキャラウェイタイムも密に繁る。その上、花色も見事な鮮やかさであった。

イブキジャコウソウ

もともと丈夫なイブキジャコウソウは特にすごい、まだ7分咲きという感じでもこの状態である。

お客様にも喜んでいただき、突然の来訪であったのに、お茶を御馳走になってしまった。日々楽しんでいらっしゃる話を聞きながら飲むお茶は格別だった。

ごちそうさまでした。