麻紐と弁当箱

季節によって仕事が大きく異なる庭仕事なので、使う資材も季節で大きく変わってくる。

冬は防寒や雪がこいのため、支柱や株元にマルチするための腐葉土、バーク堆肥の使用が増える。また、誘引作業もピークを迎えるので忘れてはならないのが誘引用の麻紐だ。

誘引に使うことができる素材は様々で、中に針金が入ったビニタイ(ビニールタイ)や化繊のひも等もポピュラーだ。ただ、後々の処理やナチュラルな見た目、価格等を総合すると結局は麻紐に落ち着いてしまう。

自然素材なのでいつかは朽ちて切れてしまうとはいえ、大抵の環境なら2年ぐらいは余裕で持つ。かなり太いツルバラの枝を誘引しても、翌年誘引し直す時にも強度十分のままである場合がほとんど。処分するのがもったいないぐらいだ。

しかも誘引や、支柱に固定するだけだから、そんなに長さは必要ないと思ったら大間違い。200メートル巻きとかのサイズを買ってもあっという間に無くなってしまう。「さあ、庭仕事にでかけるか・・・」と準備をしていて麻紐の余分が少なくなっているのに気がつき、慌ててホームセンターへ走るなんてこともしょっちゅうある。

たかが紐と思っても、実は結構コストがかかる。大降りのグレープフルーツ大に巻いた200メートル程度のもので500円台。もっと安いのもあるが、あまり細いと使えない場合もあるので、だいたいこれぐらいの価格帯に落ち着く。

ワンシーズン相当の数を使うし、買いに行く手間もバカにならない。そんなとき、とある農業資材系のホームセンターで面白いものを見つけた。

バインダーひも
「バインダーひも」
陳列されている商品を見ても具体的には何に使うものか分からなかったが、どうやら誘引にも使えそうで購入。太さも十分で4倍以上の長さがあるのに同じ500円台。これは試してみねばと思い購入した。

スタッフによると、少し旧型の稲作用コンバインで使う紐だとか。「なんでこんなもの買って来たの」と不思議がられた。彼は稲作もするので知っていたのだ。

今シーズンから使い始めて、特に問題はない。誘引作業等もかなり進んだが今のところまだ十分残っている。

ただ問題は、今までなら腰の四次元ポケットに入れることができたのに、このサイズでは無理なこと。いわゆる保温弁当箱、しかも大型のごつい奴ぐらいの大きさなのだ。仕方無く、足下において作業することが多いのでついつい蹴飛ばしがちだ。

保温弁当箱のように肩ひもがつけられればいいのに・・・。なんとか工夫できないかな?と現在思案中である。

援軍の到来

さて、いよいよローズのつぼみが膨らんでくるようになると、ゾウムシとともにいやでも目にすることが多くなるのがアブラムシ。もうすぐ開花を迎えそうなつぼみにびっしりとたかられるとさすがにいい気分はしない。庭の持ち主のお客様も、姿が見えにくいゾウムシと違い、見えやすいので心配されることが多い。

アブラムシ

つぼみが少なければ直接手でつぶすのが確実だし、こまめに木酢などで予防するという手もあるにはあるが、大きなツルばらなどではそういうわけにもいかない。

幸い、いくつかのお庭では今年、強力な援軍がやってくるようになった。ひとつはナミテントウ。ツルばらの葉の間をごそごそと動き回り、あまりアブラムシを食べている様子を見ることは少ないが、卵を産んでくれれば幼虫は特に強力な助っ人である。

ナミテントウ
もう一つはヒラタアブ。これも幼虫は大食漢のようで、すでにつぼみの奥のほうへ頭(?)をつっこんでいるからお食事中なのかもしれない。

ヒラタアブ

専門家がやってきたので、しばらく我々は手を出さず、アブラムシについてはあとはお任せすることにした。我々の仕事は、庭の持ち主に援軍の到着を伝え、彼らのために、薬剤などまかれずにしばらくは様子を見てほしいとお願いすることであった。

嫌われる理由

当店が手入れしているお庭にはローズが最低でも一つ二つ植わっていることが多い。気温が急上昇して新芽やつぼみが成長し始める今は特にこまめに巡回が必要だ。

ここ数日、何件かのローズを見て回ったが、被害の差はあるものの、ほぼすべての庭でゾウムシ(クロケシツブチョッキリ)の被害が・・・。毎年のことなのでそれほど驚かないし、よほど毎日チェックしないと防ぎきれないのもわかっている。

クロケシツブチョッキリ
新芽が見事にやられている

友人の中にはこまめに特製唐辛子入り木酢をこまめに散布して被害を抑えている人もいるが、十日や二週間に一度しかチェックができない我々には無理な話。ただ、つぼみをやられても、次の花を咲かせるエネルギーはまだ十分あるからあきらめる必要は無い。

クロケシツブチョッキリ

それにしても、これからという新芽やつぼみをピンポイントで狙ってくるのはほんとうに悔しい。そのうえ、捕まえようとするとひょいっと逃げるすばしこさ。ついでに小さいので見つけにくいことこの上無し。嫌われるのもよくわかる。でも、たくさんの種類を育てていると、選択して狙っているのがよくわかる。どういった基準で選ぶのかはわからないけど。

まあ、ゾウムシの被害もここしばらくがピーク。収まる頃にはそれぞれの庭で花が見られるだろう。

要経過観察

まだ天候は安定しないけれど、春を感じさせる日がときどき現れるようになり、お庭の作業もボチボチ進んでいる。

今の時期は、病害虫のトラブルも無いし、植物の方もほとんど成長らしい成長をしないので、久しぶりに様子を見に行くとか、お客様への挨拶程度の訪問が多い。

ところが、とある庭で異常事態を発見。バラの株元に怪しい穴。それも一つどころではない。株によっては二つ三つと見つかった。

ローズの株元の謎の穴

これは一体なんだということになり、穴の様子を確認。問題は、ここへ潜ったのか、ここから出て来たのか。出て行ったならまだ良いが、ここへ潜っていったなら今後が心配だ。とりあえず掘ってみたものの相当に深い。まっすぐでなく、斜めに深い穴だ。しかも結構でかい。

潜るにせよ、出て来たにせよ、掘り上げた泥でもありそうなのにそれも無い。お客様には、「とりあえず今後注意しておきます」と言って帰ろうとした矢先、スタッフが
「支柱のあとじゃないの?」
と指摘。

そういえば、冬の剪定を行ったとき、雪対策に支柱をかけ直した。特に埋め戻すこともしなかったのだろう。さらに観察すると、今冬新たに定植した株元には一つも穴は見つからなかった。

「おそらく原因はそれだね」
と、結論づけたものの、万一と言うこともある。要経過観察である。

教訓。支柱のあとはきちんと埋め戻しておきましょう。

誘引君

とあるお宅へは毎年年末までにつるバラの誘引に伺っている。今年も雪が降る前にそろそろと思っていた所、来週は雪の予報が出た。小雨がぱらつくものの、今日行ってしまうことにした。

さて、誘引も一人でするより、二人の方がなにかと作業がスムーズだ。特に板塀に固定する時など、裏からひもを通してもらったりすると本当に助かる。

だが、今日は他のスタッフはそれぞれ仕事があり、同行してもらうのも頼みにくい状況。「どうしようかな〜」と迷っていると、
「『誘引君』を連れて一人で行ってくれば」と一蹴されてしまった。

「誘引君」とは我々の間で呼ばれている、大型の洗濯ばさみ(一般には『竿ピンチ』と呼ばれる)である。「誘引君」の誕生は、数年前、やはり誘引時期のとあるお庭にさかのぼる。いわゆる、「ちょっと手を貸して欲しい」誘引作業が続き、そのたびにスタッフを呼ぶのが面倒になってきた。そのとき、ふと目に留まったのがそのお宅の物干しにあった竿ピンチ。御承諾頂いた上で使ってみた所、まことに具合が良いことに気がついた。

誘引君

はしごなどに昇る作業時も、ちょっと服の端にでも挟んでおけば良いし、鋭いバラのトゲにも文句ひとつ言わない。2〜3個用意しておけばつるバラをまとめる際にも仕事がスムーズにはかどるのだ。

以来、庭作業の際にはかかせないアイテムとなったのである。今年もこれから何度か活躍してくれることになりそうだ。