近いがごっつぉ

大寒も過ぎ、明後日は節分。春の気配を感じたのか、ブルーマロウの種子も発芽を始めた。いろいろな種類があるハーブは、発芽したばかりの双葉だけでは判断できないものもあるが、ブルーマロウはわりと個性的。双葉を見て確信できるのはありがたい。

ブルーマロウ

昨日今日と、圃場のすぐ裏の林で薪ストーブ用の薪の調達。この林は倒木防止のためこの冬、伐採作業が行われ、材木になりそうな太い木は搬出されたが、細くて用材にならないようなもの(といっても太いのは50cmぐらいある)が野積みにされていた。指をくわえて見ていたところ、山の持ち主の方から使って構わないとの声をかけていただいた。

伐採
宝の山。左上に見えるのが圃場

普段は車で一時間弱かかる親戚の山などで調達していたのだが、山陰の変わりやすい冬の天気、遠くまで出かけたはいいが、思わぬ天候の急変で、予定の半分も終わらないうちに帰り支度をせねばならないこともある。ところが、今回はなんと歩いて1分もかからない場所である。ちょっとした作業の合間などを使って作業ができるのはこの上なくありがたい。(Many thanks! > Mさん)

まずは野積みにされた木を割りやすいサイズにチェーンソーで玉切りしていく作業を行う。

玉切り作業
玉切り作業

何本も切っていくと徐々に刃のキレが悪くなってくるため、ソーチェーンをこまめに研ぐ必要がある。プロは現場で上手に研がれるのだが、未熟者なので足場が悪い現場で上手に研ぐのはまだまだうまくできない。こんなときも、圃場に戻ってきちんと作業台にチェーンソーを据えて刃を研ぐと、体も楽だし、下手でもずいぶん丁寧に研げる。

チェーンの研ぎ
作業台で行うチェーンの研ぎはとっても楽

もちろん、玉切りしたり大まかに割ったものを運ぶのもあっという間。普段なら、山から一輪車(ネコ車)でヨイショ、ヨイショと運び出して車に積み、1時間かけて帰り、また車から一輪車に載せ替えてようやく薪置き場に到着だ。ここなら、一輪車に積んでそのまま薪置き場に直行である。

一つ難点なのは、重機で山積みにしてあるので相当不安定だったり、邪魔な枝がかなりあることだが、そのようなことを言ってはバチが当たる。「近いがごっつぉ」なのである。

ちなみにこの辺りには「~がごっつぉ」という言い回しがある。「ご馳走」がなまって「ごっつぉ」だ。

なんでもすぐやるのが一番というときに「早いがごっつぉ」と言ったり、寒いときに、「なんにもないですけど・・・」と、温かい食べ物を出されたときに「いや~、熱いがごっつぉですわ」という感じで使う。

さすがに、以前店頭で20代の女性が商品を見て「安いがごっつぉ」とのたまった時にはのけぞったのだが。

少々足場が悪くても、天気が悪くても、太い木がなかなか切れなくても、チェーンソーが幹に噛んでも、「近いがごっつぉ」と唱えればノープロブレム。楽しく薪集めができそうである。

つきあいも長いと

そう、最初の出会いはまだ古い店舗の頃。今まで調子が良かったマロウの葉がいつの間にかかじられて丸坊主に。ビックリしてよく観察してみるとクルクルとまいた葉がいくつも見つかった。

その様子から、ハマキムシとも呼ばれる
その様子から、ハマキムシとも呼ばれる

中を覗いてみるとこいつがいた。そう、ワタノメイガの幼虫である。アオイ科の植物が好物のようで、ブルーマロウムスクマロウブラックホリホックなどが同様にターゲットになる。もともとは綿の葉につくことからこの名前がついたとか。

ワタノメイガ

生まれたては凄く小さくて食害するのも葉の裏面をこそげとるぐらい。なので最初はなかなか気づきにくいが、加速度的に大きくなって、食べるスピートもそれに比例するので気がつくと葉の大半がやられているという始末。

気がついたらとりあえず捕殺するしか手が無いし、大抵は同じ時期に2度、3度と孵化するようで、ひと安心していたらまた食べられていたということもよくある。

ただ、2回目か3回目のアタックを乗り越えるとほぼ大丈夫。幸い、苗であってもマロウたちは葉が無くなってもダウンすることは滅多に無いので、丸坊主になってもしばらく放置しておけばまた葉を伸ばしてくれる。捕殺する手間を考えるとこっちが実は楽だったりする(捕殺しようとしてもまたこれが上手に逃げるのだ)。

出会った頃は、悩みのタネであったが、これぐらいつきあいが長くなってくると、いちいち驚かないようになってくるし、おつきあいの仕方も身に付いてくる。まあ、人間社会でもそんなもんだしね。

冤罪

お盆ごろから腕や首に湿疹が出だした。はじめ、今年二回目のあせもかと思ったのだが、どうやら様子が違う。一時は枕か何かのダニではないかとも疑ったし、いま流行っている手足口病かもしれないと考えたけれど、やはり違うようだ。

しばらくしてそう言えばこれは・・・チャドクガか何かが原因では?と思い当たった。徐々に広がっていくので毛虫だとは考えもつかなかったけれど、こいつらの毛は衣服について患部を広げるのだった。そのように考えれば納得が行くし、チカチカする痛みも3年ほど前の症状を思い出させた。早く分かっていればガムテープで針を抜き取ったのに。今や遅しである。

ただ、どこでやられたのかがはっきりしない。お盆前には何軒もお庭を回ったけれど、とりあえず見かけなかったし・・・。

ふと思いついたのが、毎日畑のオクラを収穫する時にお目にかかる緑色の毛虫。ほぼ毎年オクラの葉を破れた傘のようにしてくれる大食漢だが、目についた時に収穫鋏で払い落とすぐらいだった。もしやこいつが?と、疑いを持ち、恐る恐る近寄って撮影。いままであまり気にしなかったのに、急に態度が変わってしまう。細い毛までが、ネトルのように恐ろしいものに見えてくる。ところが調べてみたらどうやら無害のようだった。

フタトガリコヤガ

ちなみに正体は、フタトガリコヤガの幼虫。もう少し大きくなると黒い点々が目立つようになる。アオイ科の植物が大好きなようだが、あまりマロウについたのを見た事が無い。オクラのほうがおいしいのだろうか。

オクラの花
オクラ・・・花もまた良し。実はサッとゆでて味噌汁に入れるのが好み。なぜか嫌がる人も多い・・・

それにしても、早口言葉に使えそうな名前である。フタトガリコヤガ、フタトガリコヤガ、フタトガリコヤガ・・・。

マロウの謎

※詳しい品種は不明です
※詳しい品種は不明です

以前にも紹介した市内の幼稚園の花壇でマロウが花盛りになっている。実はこれ、当店の苗ではなく、先生がどこかで買ってこられて小さな花壇に植えておられたものである。

大きくなったらはみ出すような小さな花壇だったので、我々が手がけている花壇に昨冬移植したのである。

その時は、これほど見事な花が咲くとは思っても見なかった。恐らくゼニアオイが咲くのだろうと思っていた。マロウは良い系統を維持するのが難しいとされ、種子を採って蒔いても花びらが貧弱になることが多い。いままでも、お客様から、「マロウ」の苗を買ったのに(もちろん当店のじゃないですよ)、ボリュームのない花ばかり咲く、と言う話を何度も聞いている。

ゼニアオイか、貧弱な株の花か。やや不明です。こんな感じ・・・と言う程度の参考写真です
ゼニアオイか、貧弱な株の花か。やや不明です。こんな感じ・・・と言う程度の参考写真です

また、良い系統の株であっても、株が充実しないと良い花が咲きにくい。十数年前、ベランダの小さな鉢で必死で育てても「なんだこりゃ」と言うような花しか咲かなかったこともあった。また、株が老化してくると、やはり貧弱な花になりやすい。全くもって面倒な花である。

いわゆるゼニアオイならこの辺りでも良く咲いている。仏様用の花としては人気があるようで、ある時お客様から、普通のゼニアオイが欲しいと言われ、がっくりしたこともあった。そのうえ、畑の隅に生えているゼニアオイの中に、時々見事なボリュームのものがあったりするのでますます混乱させられる。

圃場では「ブルーマロウ」として、Malva sylvestris ‘Mauritiana’を栽培している。この種類も一度貧弱な環境で育ててどんな花が咲くか試してみるのも一興かも知れない。