1対1

昨日今日と、とてもいい天気。2日間限定だ。小春日和とはこんな日と思えるようなポカポカした気持ちがいい日差しだ。日も短いこの季節、こんな天気の日は明るい時間を目一杯活用したい。作業のために色々買い揃えるものもあったが、夕方日が落ちてからに後回しにした。

もちろん、朝夕はずいぶん冷え込む。育苗用のビニールハウスは、無加温で開けっ放しなので、今日のように太陽が顔を出す日でも外気温と同じ。それどころか、西側にある小高い山のせいで午後はすぐに暗くなるし、山ぎわなので空気も冷たい。街中にある松江気象台の予報よりは1度か2度大体低い。天気予報では今朝の最低気温が4度ぐらいだったので、2度あるかないかだったに違いない。

それなのに、こんな中でも、まだアブラムシが活動している。先日までは暖かかったせいもあるのだろう。普段からアブラムシに比較的狙われやすいスイートグラスの苗、先月「テデトール」で対策したから、もう年内はほったらかしでいいだろうと高を括っていた。そもそも寒さで地上部が枯れてしまったらそれで安心だったのだ。

しかし妙な温かさのせいでまだ葉も残り、アブラムシも絶好調。アブラムシは糖分を含む甘露という液体で呼び寄せることでアリという用心棒を雇う。糖分を体に蓄えているので寒さに強いのかもしれないし、糖分を作り出すために「スイート」なグラスを好むのかもしれない。

幸い、今の時期は用心棒となるアリがいないから、増え方もおとなしいが用心棒の相手となるアブラムシを捕食する昆虫も非常に少ない。

1対1でアブラムシと対峙!と作業を始めたのだが、見慣れないものを見つけた。最初はゴミクズかと思ったのだが、いつかみたことがあったような記憶。これもなんかの幼虫じゃなかったかなと検索してみたらやはりクロヒラタアブの幼虫だった(たぶん)。

先月作業した時にはいなかったはずである。アリがいなくなってやってきたのか、そもそもこんなに寒いのに活動できるのかと疑問に思い、幼虫がいた苗をわかるようにして昼の休憩に入った。

午後みてみると、明らかに移動している。捕食もしているのかもしれない。

その後、「テデトール」を進めるうちにつぎつぎとクロヒラタアブの幼虫が見つかった。しかしここで問題が。

アブラムシがついた葉は、どうせ今後枯れていくのだし、バッサリと剪定してしまっていたが、クロヒラタアブの幼虫も一緒に剪定・破棄してしまうのはどうなのだろうかと思い始めた。

結局、幼虫が一緒にいた6ポットだけ葉をそのままにして、他の苗とは別にして離しておいておくことにした。

さて、今後どうなるのだろう。気温が下がって、クロヒラタアブが寒さで活動を止めるのか、その前にアブラムシを食べてしまうのか、もちろんそれ以外の結末もあるのかもしれない。小さな自然の中で繰り広げられる1対1のサバイバルゲームである。

肩こりの原因

台風が通り過ぎた今日はさすがに気温が低め。ビニールハウスの周りを赤とんぼが涼しそうに乱舞していた。きっとまた気温が上がったら涼しい山の方へ上がっていくのだろう。山から下りてきて再び会えるのは秋になってから。今から待ち遠しい。

気温が急に上がった先週後半から昨日あたりは、昆虫たちの勢いも目に見えて活発だった。アリや蝶、蜂などはもちろん、いろいろな昆虫たちが急に動き始めた感じだ。

ヒラタアブ

今日もヒラタアブの成虫が盛んにホバリングしたり、葉にとまってお尻を振ったりしていた。蜜を探しているのか、それとも幼虫のためにアブラムシがたくさんいそうな産卵場所を探しているのか・・・。

ただ、中にはあまり急に動かないでいただきたい種類もいる。一つはコガネムシの幼虫。成虫が上手に育苗ポットの中に潜り込んで産卵。孵化して、ある程度大きくなってくると土がふわふわになってくるのでわかる。その頃にはずいぶん根もたべられてしまっている。大抵1ポットに4、5匹産んでいるので、きちんと全部取り除くのが難しい。小さいうちだと全て見つけきれないし、大きくなってからでは、根が食い荒らされて苗が復活できない事も多い。

ただ、コガネムシの幼虫の場合は、大抵苗を発売したり、発送する前に発見できるのでそういう意味ではまだ良い。

問題は・・・。

ローマンカモミール
ローマンカモミールの食害

さあ、梱包をはじめようと苗を取り出したら、ローマンカモミールの葉が丸坊主。昨日準備した苗なので一晩でこんなに食べるのはその名も夜盗虫(ヨトウムシ)の仕業に違いない。ナメクジも疑われるかもしれないが、特徴的な光る粘液が残っていない。表面の土が掘られたようにサクサクしているのも動かぬ証拠だ。

このままでは発送するわけにいかず、この被害だけのために新しい苗を再度圃場にとりにいく羽目になった。

スイートマジョラム
スイートマジョラム。見事に葉が食われている

この写真はスイートマジョラムだが、朝、「あれ、まだこんなに小さかったっけ」と違和感を感じてよく見ると葉が食い荒らされている。株元をよく見てみるとなんだか柔らかそう。株元の様子はコガネムシの幼虫被害にも似ているが、彼らは葉をかじったりはしない。

夜盗虫の被害
株元がふわふわに

そっと周りを掘ってみると、

夜盗虫
まだそれほど大きくない

いらっしゃいました。夜中じゅう大宴会をして満腹で朝帰り、土の中にもぐって丸まってお休み中のようだ。

それでも、コガネムシと違って早く見つければ、また苗は育つ。少し早めに剪定したと思えばいいのだ。

それに、ほぼ単独行動である点も潔くていい。卵は固まって産み付けられるのだがその後は一人で生きているようすなので、健気さも感じられる。

もちろん、こんな大食いが集団でやってこられてはひとたまりもないので勘弁してもらいたい。

また、、今年も1件あったが、苗にそのままついてお客様のところまで行ってしまう事が稀にあるので、発送時には注意が必要だ。

ここしばらく、バジルなど、柔らかくて美味しい葉のハーブの発送が多いので発送担当は目を凝らしている。肩が痛いと言っていたのも、そのせいかもしれない・・・。

援軍の到来

さて、いよいよローズのつぼみが膨らんでくるようになると、ゾウムシとともにいやでも目にすることが多くなるのがアブラムシ。もうすぐ開花を迎えそうなつぼみにびっしりとたかられるとさすがにいい気分はしない。庭の持ち主のお客様も、姿が見えにくいゾウムシと違い、見えやすいので心配されることが多い。

アブラムシ

つぼみが少なければ直接手でつぶすのが確実だし、こまめに木酢などで予防するという手もあるにはあるが、大きなツルばらなどではそういうわけにもいかない。

幸い、いくつかのお庭では今年、強力な援軍がやってくるようになった。ひとつはナミテントウ。ツルばらの葉の間をごそごそと動き回り、あまりアブラムシを食べている様子を見ることは少ないが、卵を産んでくれれば幼虫は特に強力な助っ人である。

ナミテントウ
もう一つはヒラタアブ。これも幼虫は大食漢のようで、すでにつぼみの奥のほうへ頭(?)をつっこんでいるからお食事中なのかもしれない。

ヒラタアブ

専門家がやってきたので、しばらく我々は手を出さず、アブラムシについてはあとはお任せすることにした。我々の仕事は、庭の持ち主に援軍の到着を伝え、彼らのために、薬剤などまかれずにしばらくは様子を見てほしいとお願いすることであった。

住み心地良好

その存在に気がついて以来、目を細くして見つめているヒラタアブ。圃場を一回りするといたる所で目にするのだが、それでもいくつかお気に入りの花があるようだ。

コンパニオンプランツの本などには、ディルフェンネルがこれらハナアブの仲間を誘引すると出ている。でも、この圃場では、ヤロウの花が好きなようで、いつ通っても一匹や二匹見つかる。

ヒラタアブ

一方で幼虫の方は、しっかりとエサがある所で育っていて、アブラムシなどめったにいないヤロウでは見つからない。こんな小さな昆虫なのに、幼い頃に食べたものを覚えていてアブラムシが多い植物に産卵するのだろうか。それとも幼虫はあの小さな体でアブラムシを探してえっちらおっちら歩き回るのだろうか。いずれにしても不思議である。

ただ、この圃場の周なら、花も何百種類あるし、無農薬で健康に育った(?)
アブラムシも多いことだからさぞ住みやすいことであろう。

Not so photogenic

ハーブを始めた頃から近年まで、正体が良く分からない虫がいた。というか、きちんと調べなかっただけなのだが。

庭や畑、ビニールハウスの中でもところ構わず出没する1cmに満たない小さなハチのような昆虫。ホバリングが得意で、じっと一ヶ所で空中停止していたかと思うと、ぷーんとどっかへ飛んでいってしまう。

悪さはしないような気はしていたものの、正体が分からないというのは精神衛生上良くなかった。その後ヒラタアブと知ってとても嬉しく思ったのを覚えている。幼虫はアブラムシの強力な天敵である。

一口にヒラタアブといっても非常にたくさんの種類があるようで私が普段目にするのが何という種類かまでは把握できていない。ヒラタアブ自体、ハナアブという大きなグループに属するようだ。しかもアブという名前で呼ばれているものの、むしろハエの仲間だそうである。

さて、私が普段良く見かけるのが下の写真の種類である。ネットで検索するとホバリングしている写真が良く載っている。その姿はなかなか可愛らしいので何度も撮影にチャレンジしたが、技術のせいか、それともデジカメの性能の限界なのかまともな写真が撮れなかった。仕方なく、止まっている時の写真を掲載する。ただの小さなハチである・・・。

ラングウォートの葉で一休み
ラングウォートの葉で一休み

これと、複眼が赤っぽい種類を良く見かける。こちらも飛んでいる時はいい感じだが、止まっているとアブかハエ。あまりぱっとしない。

まして、幼虫にいたっては事実、ウジである。葉に付いている姿も、長い間何かのサナギだとばかり思っていた。

ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。
ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。

これもネットからの情報だが、幼虫がアブラムシを捕食する際には身をよじるようにして食べることもあるとか。アブラムシを食べてくれるのはありがたいが、できるならあまり見たくない姿である。撮影する気も起きないので見たい人は画像検索してみてください。