竹を使う理由

行く、逃げるの1,2月が終わり、いよいよ3月。「あっという間に去ってしまった・・・」とならないように気合が入る。

植物の成長が鈍る冬は他の季節に比べるとどうしてもできる仕事が限られてくる。そこでビニールハウスの改修、補修、作業環境の改良などを集中して行っているが、この作業ももうすこしで終わりを迎える。

例年のように行うのが、育苗時に苗を並べるための竹の棚の改修である。

ベンチ作り

育苗のために腰の高さぐらいまでに上げた台は育苗ベンチと呼ばれ、普通はネット状になった薄い網状の金属(エキスパンドメタルというんだそうな)を広げてその上に苗のケースを並べることが多い。当店にも、譲ってもらったエキスパンドメタルがいくつかある。

エキスパンドメタル
当時憧れだったエキスパンドメタル

この仕事を始めた当初は大規模に栽培しておられる農家が大抵このエキスパンドメタルを使っているのを見てすこし憧れだったこともある。

お金もなかった当時は地面に杭を立て、その上に桁を渡し、その上に木製のパレットを乗せて長い台を作っていた。水はけは問題ないし、パレットは近くの運送業者でいくらでももらえるような時代だった。

ただ、使い古したパレットに始終水をかけることで案外腐ってしまうのが速く、処分も結構大変だった。また、そのうちパレットがプラスチックのリユース品になり、譲ってもらえなくなった。この時点でエキスパンドメタルに変えてしまうことができたら今頃全てがエキスパンドメタルの台になっていたのかもしれないが、残念ながら当時はそんな余裕もなかったのだ。

また、エキスパンドメタルは実際に使ってみると端の部分が引っかかるし、夏は結構暑くなる。しかも丈夫な分、加工が難しい。ちょっとサイズを変えようとしても一苦労だ。そのうえ処分となると外部に頼まなければ手に負えない。

安価で手に入りやすく、加工がしやすく、片付けも楽、となったら必然的に竹が候補に上がってきた。

安価で手に入りやすいということでは、ハウスの目の前に竹林があるし、親戚にも放置された竹林がある。そのうえスタッフの家にも竹林がある・・・といった感じ。竹を切るのはそれなりに重労働なのでむしろ切ってもらえると喜ばれるぐらいで、気持ちほどのお礼で済むことが多い。

いつも竹を切り出す竹林

もちろん、加工はこの上もなくしやすい。よく切れるノコギリとナタさえあれば十分である。

ナタと竹

それなのに耐久性は相当高い。

跳ね上げ式の台
跳ね上げ式の台

開け閉めが出来て通路のように使える部分もこのとおり、簡単に作れる。通路幅がすこし広くとりたい場所も、ノコギリ一つでハイ、出来上がり。エキスパンドメタルではこうはいかないだろう。

それでも何年も使っていると所々が折れたり腐ってくるので取り替えが必要だ。取り替えた竹は最後は燃料となり、作業場のストーブで主に焚き付けとなり使命を終える。更に言えば残った灰も畑に撒かれて植物を育てる。極めて気持ちの良い素材だ。

交換した竹
古くなって交換した竹
竹の最後
最後は燃料として

竹を使うメリットとして抗菌作用が・・・とも言われるが、とりあえず育苗においてはそれほど違いは感じないので、この点でのメリットはほとんどないようだ。ハーブ自体の抗菌作用がまさっているのかもしれない。

加工する手間なども考えるとコスト的にはむしろエキスパンドメタルに軍配があがるのだろうが、竹を切ったり割ったりも冬の良いエクササイズのつもりで行っている。

竹切りがしんどくなるまでしばらくはこの素材と付き合っていくことになりそうだ。