四季咲き

冬の間、ニオイゼラニウムの仲間はほとんどがお休み中である。ビニールハウスの中では株が大きく傷む事はないとはいえ、古い葉が落ちていったり、成長を止めてじっと春のベストシーズンに備えている。

唯一、パインゼラニウムだけが季節を忘れたかのように花をつけ続けている。「四季咲き」というキーワードは一般的には好意的に受け止められる事が多い。季節を問わず咲いてくれると言うのはなかなか有り難い事なのだ。

パインゼラニウム

だが、パインゼラニウムのように始終咲いていると一寸有難みが無くなってくる。これで葉の香りが良ければまだプラス面もあったろう。しかし、残念ながらまさに松やにを思わせる香り。好みもあるにせよ、少なくとも自分はあまり好きな香りとは言えない。むしろ、深みのあるグリーンみの強い葉の方に魅力を感じる。

普通四季咲きのものは、剪定するタイミングが図り辛く、つい躊躇してしまうものだが、このゼラニウムは惜しげも無くチャキチャキとハサミを入れることができる。その点は気楽でいいかも知れない。

嘴だらけ

ニオイゼラニウムの花が終る頃になると、圃場は嘴だらけになる。ちょうどゼラニウムの花の後、種子の莢が鳥の嘴のようになるのだ。

ニオイゼラニウム

諸説あるようだが、ゼラニウムの学名、Pelargoniumも、Pelargos(コウノトリ・ギリシア語)の嘴からきているとされる。

ニオイゼラニウム

種子が熟してくると、莢が割れて元の部分から徐々に種子が顔を出す。

ニオイゼラニウム

種子も雰囲気が鳥の羽毛を思わせる感じである。他にも鳥とのつながりが多いようで、園芸種の名前にもPheasant’s foot(キジの足)、Peacock(孔雀)など付いていたりする。

この種子を蒔くとそこそこ発芽する。圃場にはたくさんの種類のゼラニウムが育っているので、ちょっと変わった花が一つや二つ出てきそうなのだが、非常にありきたりというか、あまり特徴の無い、強いて表現するならぼやっとした感じのゼラニウムが出てくる場合がほとんどだ。

最初の頃はこまめに種子を採っていたりもしたが、今はさっぱりである。

いたるところに嘴が見えるここしばらく、先端恐怖症の人は近づかない方が良いかも知れない。

ミセスキングスリーはお年?

先日誕生日を迎え、大台に入った。もうずいぶん長く生きた気がする。なんて言っていると「五十が折り返し」と豪語するスタッフに笑われそうだ。

ニオイゼラニウムが次々と咲き続けている。松江では簡単な防寒で(場所によってはしなくても)冬を越すし、病害虫ともほとんど無縁なので気楽に育てられる。花の時期もいつの間にか咲きはじめてくるという感じである。

アプリコットゼラニウム

今日咲いていたアプリコットゼラニウムは結構好きな花である。花びらの縁の周りが白っぽく、柔らかい感じで、花の姿も可愛らしい。

ミセスキングスリーゼラニウム

一方、ミセスキングスリーゼラニウムは花つきも良く、大きめの花で見事だが、なんとも色がどぎつい。コントラスト強すぎである。今、画面で見ていても目がチカチカしてくる。

目が老化してくると、コントラストが強い色でないと満足しにくくなってくるという。パステルカラーが楽しめるのは目の年齢が若いうちである。店頭でお客様の花の好みを聞くとはっきりわかる。まだ、この花の色がきつく感じられるのは目が若い証拠だろうか。

ゼラニウムに限らず、花には女性の名前が付けられたものが多い。作出した当人の名前だったり、その女性に捧げられて名前が付けられるようだ。ミセス・キングスリーは作出者なのか、作出者の奥様なのか知らないけれど、この色が気に入ったのなら結構お年だったのかも知れない。

ブドウ葉

ニオイゼラニウムの花が少しづつ咲きはじめている。花だけを見ても一つ一つ個性が有り、コレクターが多いのもうなづける。

グレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)

中でも原種は変わった花も多い。この間から咲きはじめたグレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)も、数年前初めて花を見たとき、虫に食われたか、病気か何か問題があるのではないかと思った。花色はごく一般的だったのに、下花弁がとても小さかったのである。

グレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)

でも、それから咲く花咲く花、いずれも同じだったので安心した。蝶が羽根を広げたようにも見えるし、ピンクのハートにも見える。といっても花の形状からは名前がつけにくかったのだろう。通称は「ブドウ葉」である。別に、「VINE LEAVED」と呼ばれるれるゼラニウムもあってはなはだ紛らわしかったりする。