美声は少し離れて

夕方、ハウスでの作業が一段落して、涼しい風に当ろうと外へ出ると、すぐそばで「カナカナカナ」とヒグラシの声。裏の山では夕暮れの大合唱が始まっている。どうやら一匹だけでソロを気取っているようだ。それにしても間近だと実に耳につく声である。

あまりに近いので、鳴き声のする先を探してみると、いたいた。こんなに近くでお目にかかるのは初めてかも知れない。小学生のころ一度捕まえたことがあったか、無かったか。

ヒグラシ

セミの中では鳴く時間帯と言い、少し寂しさを感じさせる鳴き声と言い、好きな種類であるけれど、あまりに近くで鳴かれるとその良さも半減してしまう。また、山が鳴いているような大合唱もうるさいものだ。朝、夜明け間際の涼しい時間に遠くから聞こえるのは良いものだし、夕方、仕事の疲れをそっとぬぐい取ってくれるような数匹での合唱がベストと言いたい。

さて、ソロの演奏を終えた一匹、写真を撮られると恥ずかしかったのか横歩きで舞台の袖へと消えていったのであった。