南向き軒下

たくさんのハーブが開花をはじめる時期となり、お客様のお庭へ行くのにも楽しみが多い。

このお庭には、南向き軒下の花壇がある。吹き込まないかぎり雨がかからない。いつもカラカラだ。だが、深くまで掘ってあるので、地上部は乾燥していても深い所はそこそこの湿度はあるようだ。おかげで多湿に弱いハーブもとても元気に育つ。

当地では地植えではダメージの多いオレガノ・カルカラータケントビューティーなども花後の剪定ぐらいで充分である。

タイムも花付きは良いし、色もビビッドになる、今年はタイミングがずれたが、昨年、モロッコタイムの色鮮やかなこと。びっくりした。

マスティックタイム

このマスティックタイムも見事な咲きようだった。うちの圃場ではもっと花もまばらだ。無論香りが素晴らしいのは言うまでもない。つい作業の手を止めて香りを堪能してしまった。

イメージの善し悪し

コガネムシの幼虫には毎年のように苦い思いをさせられている。親木のラベンダーの根が食害されてダウンしてしまうことはしょっちゅうだし、お客様の庭のローマンカモミールが一区画あっという間にダウンしてしまったこともあった。店先で広がりかけていたカーペットグラスも昨年、相当かじられてしまい、さすがのカーペットグラスも一時瀕死の状態になってしまった。

なので、「コガネムシ」と聞くと悪いイメージが思い浮かんでしまう。けれど「カナブン」という名前には子供の頃の夏が思い出され、なんとなくほのぼのとした気分になってくる。憧れのカブトムシを探して歩いた雑木林。カブトムシはいつも見つからず、枝にしがみついているのはいつもカナブンだった。それでも、「カナブンがいるなら、きっとこの木にはカブトムシもやって来る」と、毎回胸をわくわくさせて向かったものだ。いつも空振りだったけど。

カナブン

このカナブンは、圃場の横のギンヨウボダイジュにしがみついていた。樹液を探してやって来たのだろうか。でも、スズメバチと間違えるような大きな羽音でびっくりさせたり、ハーブの株元に産卵するのは勘弁願いたい。

ふたつのロイヤル

ちょうど今、ロイヤルパープルラベンダーが花盛りである。ちょうど時を同じくしてロイヤルパープルセイジも開花し始めた。

ロイヤルパープルラベンダー

だが、畏れ多い名を冠したふたつの花はちょっと気難しくて、御機嫌を損ねたらアウトである。ロイヤルパープルラベンダーの方はだらしなく伸び、花色もぼやけた感じになるし、ロイヤルパープルセイジも枝がダランとしてしまい、花付きも悪くなってしまう。今年はまずまずと言った所だが、王族の方々はそもそもこの蒸し暑い環境はお気に召さないらしい。

ロイヤルパープルセイジ

めったに無いけれど、秋に咲くロイヤルパープルラベンダーはため息が出るような色になるし、涼しい時期に咲くロイヤルパープルセイジはすがすがしさが際立つ上に、風格さえ感じさせる色となる。写真では伝えられないのが残念だ。

そんなところも「ロイヤル」の名がふさわしいと感じさせる花達である。

ゾウさん

バラを育てる人にとってはゾウムシは大敵だ。大切な、ようやく膨らみ始めた蕾がある朝、突然被害に遭ってしまうのはやりきれない。

そのうえ、このゾウムシはとても小さい。しかも、ゾウと言う割には敏感で、手を伸ばすとさっと落下して難を逃れようとする。したたかである。その名もバラゾウムシ。逃げられると腹が立つ。

幸い、ハーブにはこのゾウムシに被害を受けるものは今の所見たことが無い。「へん、ハーブなんて!」てな感じかも知れない。

ゾウムシ

でも、別のゾウムシはやって来るようだ。写真はマウンテンセイジの葉にいた一匹。特にどこかかじるわけではなく、葉の上をのそのそと歩いていた。「わし、何にも悪いことしてないから堂々としてますよ」といったユーモラスな雰囲気だった。でも、バラゾウムシに比べると遥かに大きなサイズ。こいつにやられたら少々大きな株もダメージを受けてしまいそうである。

擬態

同属の植物で、名前のラベルが無くなると見分けがつかなくなってしまう種類は多い。コモン系のラベンダーなどは、花が咲いていればともかく、他のシーズンなら大変だ。ロゼアラベンダーとヒッドコートラベンダーを並べてラベルを外されたら、100パーセントの自信を持って判別することはできない。

属が違えばまずそんなことはありえないだろう。花が咲いていなくてもセイジとローズマリーを間違えることは無いだろうし、タイムとヒソップ、セイボリーも良く観察すれば違いは明らかだ。

ところが、この植物には惑わされた。サザンウッドゼラニウムである。

花さえ咲けば一目瞭然
花さえ咲けば一目瞭然

相手はもちろんサザンウッド。当然、花が咲けば問題ない。ところが、冬、どちらの葉も貧弱になってしまった時に問題は起こった。鉛筆書きのラベルの字がかすれてしまったのだ。

葉の感じも似ているし、葉の匂いも不思議なことに良く似ているのだ。実際、このゼラニウムに対して、サザンウッドゼラニウム以外のどんな名前が付けられるのだろう。ついでに学名だってabrotanifoliumだ。偶然と言えばそれまでだが、まるで動物が他の種類に姿形を似せる擬態のようだ。

幸い、翌春花が咲いてゼラニウムと言うことが確実となったが、そのため一年以上発売することが遅れてしまったのである。