期せずして

人生は運命のいたずらによって大きく左右されることが多い。そんな人間の近くにいる植物たちも少なからず我々の気まぐれで運命が変わる。

コクテール?

このローズ、もともとはお客さんにいただいた切り花である。カクテル(コクテール)でないかと思われるけれど、詳しい品種は不明。2~3年前の初夏ふっと入ってきたお客様が、「これ、うちで咲いたからあげる」と、くれたのだ。

数日ディスプレイとして店頭を飾り、あまりに奇麗だったのか、花が終った後でスタッフに「挿し木でつけてみて?」と頼まれたのである。もともと一本の切り花である。店頭で何日も置いておいた、しかも花が咲いた直後の枝が発根するわけ無いと一度は断った。

挿し穂として何本もあるのならなんとか一本ぐらいは発根するかも知れない。でもたった一本で・・・。と思いつつもどうせ他の挿し木作業をする予定があったので合わせて適当に挿しておいた。

こういうのが案外うまく行ったりするからかなわない。いつの間にか根を伸ばし、ポット上げ、そのまま成長して大鉢に移植。その後も存在を忘れていたらこの春開花である。もともと強い種類だったのかも知れないけれど、当の本人(ローズ)も驚いていることだろう。

誰かの気まぐれがなければそのままごみ箱行きだったはずだ。この強運の持ち主、これからどんな運命を辿るのだろう。

今年もよろしく

昨日、水やりをしていたら生まれたばかりのカマキリを見つけた。今日、あらためて定番の場所へ行くと、いたいた。なぜかラベンダーの親木のところでは良く見つかるのである。ラベンダーの新芽を背景にして見つけやすい色合いなのか、それともラベンダーの周りが餌が豊富なのか分からない。

カマキリ

小さな手足を動かしてラベンダーの新芽の周りを上へ下へと動き回っている。巨大な生物が現れたので驚いているのだろう。

カマキリ

カマキリは周りの小動物の中でもかなり好感度が高い。害虫も捕食してくれるし、園芸の邪魔にもならない。わりとビニールハウスの中に居着いてくれるのも嬉しい。害虫を食べることでは、クモもポイント高いのだが、張られた巣が何かと邪魔になることとが多いし、体にまとわりつかれた時はかなり不快なのがマイナスポイントなのである。

ごくたまに、今の時期、卵鞘から一気に飛び出すカマキリの幼虫の群れを見ることがある。何百匹もの小さな命が思い思いの方向へ進んでいく姿は感動的である(ちょっと気持ち悪いけど)。でも、そのうち、大きくなるまで生き残れるのは僅か数匹だという。昆虫の仲間ではかなり強いランクのように思えるが、自然界で生き残るというのはどんな種類でも厳しいものなのだ。

今年もしっかり活躍してもらいたい。だから秋から冬にカマキリの卵鞘を見つけると、剪定したいハーブについていてもそのままそっとしておくのである。今年もよろしく。

小さめに

親木を育てているビニールハウスではフレンチ系のラベンダーが花盛り。ちょうどローズマリーとバトンタッチをするように咲きはじめるのが嬉しい。

フレンチ系のラベンダーは丈夫であまり手もかからないし、松江辺りではほったらかしで育てることができる。でも、大株になった後も手入れをしないと花数は増えても花が小さく貧弱になる場合が多い。特に上部包葉に特徴がある種類はなおさら真価が発揮できない。

でも、中には小さめの花でも悪くないと思われる種類もある。それが写真の白花フレンチラベンダー。もちろん、充実した花がしっかり咲くのも見事である。一方でこんなふうに可愛らしくたくさん咲くのもまた良い感じだ。花の白さがカバーしてくれるのだろうか。

白花フレンチラベンダー

ただ、白花フレンチラベンダーは花が終って花色が茶色になってくると目立つのである。紫系の種類はそれほどでもないのに、これも白い色のため。仕方がない。

さて、小さい花が可愛らしく咲いた、この白花フレンチラベンダー、つまりあまり手入れをしていない。ということなのだ。花が終ったら少し大きめの鉢に植え替えやろう。来年は大きな花が見れるように。

ブドウ葉

ニオイゼラニウムの花が少しづつ咲きはじめている。花だけを見ても一つ一つ個性が有り、コレクターが多いのもうなづける。

グレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)

中でも原種は変わった花も多い。この間から咲きはじめたグレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)も、数年前初めて花を見たとき、虫に食われたか、病気か何か問題があるのではないかと思った。花色はごく一般的だったのに、下花弁がとても小さかったのである。

グレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)

でも、それから咲く花咲く花、いずれも同じだったので安心した。蝶が羽根を広げたようにも見えるし、ピンクのハートにも見える。といっても花の形状からは名前がつけにくかったのだろう。通称は「ブドウ葉」である。別に、「VINE LEAVED」と呼ばれるれるゼラニウムもあってはなはだ紛らわしかったりする。

先人の失敗

長い間品切中になっていたチャイブスがようやく大きくなってきた。それほど遠くない時期に発売できそうだ。

チャイブス

チャイブを見るたびに思いだすのは、まだハーブを作りはじめてまもない頃、園芸の大先輩から伺った笑い話である。大先輩の友人は、チャイブを育てようと、ポットに種を蒔いたのだ。ところが、1ポットにひと粒づつ。当然のことながらヒュ〜ッと一本だけ伸びたポットが並ぶことになったそうである。

その時は「それはドジですね。」と答えていた自分だったが、まだ育苗もほとんどしていない頃である。教えてもらわなかったらきっと同じことをしでかしたに違いない。笑いながら、「チャイブは数粒を蒔くこと!」としっかり心に刻んだのである。

まして今なら、直まきもせず、小さなプラグに数粒づつ巻いてポット上げするか、株分けで苗を作るのでポット苗も比較的揃いやすい。写真のは、種子からなのでちょっと線が細い感じ。ガシッとした株分け苗にはやはり劣る。

同じ種子からの苗でも秋にポット上げすると、冬いったん地上部が枯れ、春に出てくる新芽のものはすごくエネルギッシュである。本当は春の苗はこちらを出したいというのが本音だ。今年は間に合わなかったけど。