こんな場所にはこのハーブ-ワイルドクリーピングタイム

 

ワイルドクリーピングタイム
これは、当店の店の南側、ハーブたちの苗や鉢が並ぶエントランス部分。今年の春頃から伸びてきたワイルドクリーピングタイムが、非常に調子良く育ち、6月の終わりには花を咲かせた。

おおよそ、タイムの仲間はこういったレンガの隙間が大好きである。このレンガはいわゆるインターロッキングと同様な作り方がしてあるのでレンガとレンガの間に少し隙間がある。普通のレンガ敷だと、レンガの下はモルタルでガッチガチに固めるのだが、下は砂で基礎がしてあり透水性もある。そのため、こぼれ種で発芽したこのタイムもこれ幸いと細い隙間からどんどん根を下に伸ばしていったのだろう。

ワイルドクリーピングタイム
わずかなレンガの隙間に向かって根を伸ばしている

普通のお庭でも、レンガなどで作った花壇沿いのクリーピングタイムが妙に元気だと言うことは無いだろうか。レンガにそって下に下にと根を伸ばせる環境がタイムにとっては嬉しいようだ。当店が管理しているあるお庭でも、レンガの通路沿いが一番タイムが元気だったりす
る。

それでも、さすがにこの夏の暑さが耐えられるか心配だった。午前中は少し日陰になるものの午後からはほとんど日光を遮るものはなく、レンガが溜め込む熱も半端ではないだろう。タイムやラベンダーでよくあるのだが、秋に疲れでぱたっと枯れることもあるだろうと思っていた。

ワイルドクリーピングタイム
11月の終わりの様子

ところが冬を迎える今になっても元気なところを見ると、何ら問題が無かったようだ。さすがに、中央部は「グラウンドカバーのミントが枯れていきます」でも写真を載せているように、中央部分(古い部分)がやや葉が落ち始めている。この場合は土をくわえるわけにはいかないので、この冬に剪定をしてやろうと思う。

一つ残念なのは苗のようにすでにある程度根が伸びたものをこの場所に植え付けようとしても非常に困難でしかも成功率は低いということだ。以前、「ど根性ナントカ」で書いたようにこぼれ種や小さい株の時期からこの場所に根付こうとするものなら苦にならないと思うが。

 

(※お断りしておきますが、タイトルに「ワイルドクリーピングタイム」とつけたものの、この株はこぼれ種から生えてきた株で、厳密には「ワイルドクリーピ ングタイム」とは言えないかもしれません。ただ、近くにワイルドクリーピングタイムの株もあり、実際にこぼれ種でも増えやすい種類で、姿形も同様だったの でまず間違いは無いと思います。御了承ください。また、この種類に限らず、他の匍匐性のタイムも同じような場所を好むことが多いようです)

ワイルドクリーピングタイム

こんな場所にはこのハーブ-オレガノ・ハイブリッド

周囲に何も無いというのは、風通しや日当りという点から見ても申し分ない環境である。ただ、裏を返せば、真夏でも一日中容赦なく日は照りつけるし、冬は寒風が吹き付けるという過酷な環境でもあるからハーブを選ぶにもよくよく考えないといけない。

オレガノ・ハイブリッド
ましてや、この場所のように、手前は道路、奥は駐車場、つまり周囲はアスファルトばかりという環境はなおさらハードだ。建物が駐車場を挟んで東側にあるとはいえ、高さが低く、北東方向。真夏の早朝には陰を作るかも・・・という程度。風よけにもまったくならない。

そんな場所でも乾燥を好む(というか過湿を嫌う)ハーブを上手に使えば何とかなる。中央にピンクの花を咲かせているのがオレガノ・ハイブリッド。普段はせいぜい10cmぐらいで葉を広げているが、初夏から花茎をのばして一気に開花する。夏の暑さにも全くこたえないのもうれしい。

実はこれらのオレガノ類は日当りが悪いと本当にだらしなくなってしまう。
オレガノ・ハイブリッド
上の写真は当店の北西の花壇にある同じオレガノ・ハイブリッド。午後からの日差しはものすごくきついが、お昼までは建物で日陰になるのでちょっとだらっとしてしまう。いろも今ひとつ鮮やかさに欠ける。もちろん水もやっていないのだが・・・・

話は最初の花壇に戻る。
中央に看板用の支柱が立っていて、地面から30cmほどの高さ。水はけは抜群に良いが、土も深さが確保され、しっかり土作りもしているので、根にとってはそれほど過酷でもないだろう。

オレガノ・ハイブリッドの花
ちょうど今(7月)、満開だし、これぐらいでドライフラワーにするとすぐきれいに乾くのだが、残念ながらここは「見せる花壇」なので、まだしばらく前を通る人の目を楽しませてもらうことになるだろう。

花が終るころには、地際に次の新芽が見え始める。これらを伸ばすよう、ばっさり剪定すると、その後も成長は心配ない。小面積だがグラウンドカバーっぽく花壇を覆ってくれるだろう。

こんな場所にはこのハーブ-ハニーサックル・セロチナ

ゼロからお庭を造るのではなく、すでに形ができているお庭に手を加えていくときに問題になるのが元からある構造物である。

 

花壇であり、柱であり、塀であるが、上手に活かせるか、それとも庭づくりに邪魔な存在になるか、知恵のしぼりどころだ。

 

このお庭を初めて見た時も、畑の縁にあるサルスベリと、そのすぐ横に立つ木製の電信柱(?)の残骸がまず目についた。とにかく、サルスベリとの位置関係が微妙な場所に立っている。

 

てっぺんから割れが入っているとはいえ、まだまだ結構丈夫な感じ。切り倒してしまえば分けないのだが、なんとか使えないかなと考えてしまうのが私の悪いところだ。

 

柱状のものなら、何かを巻き付かせてしまおう、ということで、ハニーサックル・セロチナを柱の足下に植えてみることにした。西側にサルスベリがあるので、初夏から秋にはそこそこの日陰にもなるが、ハニーサックルは陰にもかなり耐えるので問題ない。花も先にハニーサックルが咲いて、夏にサルスベリが開花するので、重なることもなさそうだ。

 

元々が野菜を作っていた畑だったので、肥料が十分だったのか、秋に植えたら、翌春からすくすくと育ち、一年半経った今年はつるの数もかなり増えた。

 

ハニーサックルは、細い枝なら絡みついていくが、これぐらい太いとさすがに無理だし、アイビーのように吸着するわけではない。釘かなにかで、つるを固定するものを作ろうかとも思いつつ、昨年はてっぺんの割れ目に長いつるを引っ掛けて、それ以降はそのつるに新しいつるを絡ませていくことで十分固定できた。

ハニーサックル・セロチナ

今年はまだかもと思っていた花も咲かせ始め、気温の上昇とともにつるの数もどんどん増加、毎回訪れるたびにつるの処理に追われている。

 

先日行った時には、隣のサルスベリにも絡みつき始めていた。もしかしたら来年にはこの柱もほぼ覆われているかもしれないと予想している。今後は肥料は控えめに。そうしないと、何年か後にはサルスベリも覆い尽くすぐらいになりそうだ(実際、ツルバラと組み合わせたお庭もあるのだが、何年か後には大抵抑えるのに苦労する。バラの肥料が効きすぎるんだよね・・・)。

 

 

こんな場所にはこのハーブ-ナスターチウム

 

楽しむお庭と見せるお庭では植える植物を選ぶときの考え方も異なってくる。

楽しむお庭では、自分が好きなものを選び、さらにその場所に合うのであれば言うことは無いが、見せるお庭では、来ていたただいた方が「ここは良く手入れされているね」と感じていただくことも大事である。しかも、植物のことを知らない人が見てもそう思っていただくのが理想だ。

なので、依頼されて見せるお庭を造るのはプレッシャーも大きい。うまくいくものと、育ちにくいものを入れ替えつつこまめにメンテナンスする必要がでてくる。お客様の好みも入れると選択肢はますます限られてくる。知恵のしぼりどころだ。

この場所はスタッフが植物を選び管理しているとある病院の花壇である。初め、ナスタチウムを植えるという話を聞いた時には少し「どうかなー」と首を傾げた。品種はナスターチウム・ミルクメイド。明るい緑色の葉と、クリーム色の花が清楚な感じのナスタチウムだ。

ナスタチウム・ミルクメイド

ここ松江ではナスタチウムは結構育ちかたが微妙で、うまくいく場合は良いが、ダメな時はサッパリと言うハーブである。また、柔らかいせいでポッキリ折れやすいのもやや扱いにくいところ。もっと涼しい地域ならば、春から秋まで長く楽しめるし、もっと温かければ、秋から春まで楽しむことができるだろう。しかし、夏越しも難、冬越しも難という土地なのだ。

もちろん、春に植えて夏までの一年草として扱う分にはいい。ただ、ナスタチウムの魅力は夏以降、盛り返してくると秋遅く、場合によっては年末まで花と葉が楽しめることだ。日々手入れを怠らなければ十分可能だが、さて、1,2週に一度のメンテナンスしかできないよそのお庭でそれができるか、まず心配だったのだ。

それでも植えてから夏までは順調に育ち開花。夏も虫食いに会ったり、葉が傷んだりしたが、強めに剪定したことで、周りのハーブに守られて秋を迎えた。今回、南向きの花壇だったので、夏越しも相当ハードルが高かったのだが、幸い真上にエントランスの屋根があり、真昼の直射日光は防げた。そのかわり雨がかからず、真夏の一時期の水やりには苦労したようだ。

 

ナスタチウム・ミルクメイド
11月初めの様子。涼しくなり、快適そうに開花中。

秋からは元気を取り戻し、花も次々と楽しめるようになった。特に明るい色の葉と、花のコントラストが目に優しい。

 

ナスタチウム・ミルクメイド
12月終わり。程よい日差しでまだまだ元気

予定通り年末を迎えた。そろそろダウンしてくるし、年末年始のところで刈り込むことになるかな?と考えていたのだが、相変わらず開花中。どうやら、横からの日差しが冬の成長を助けていたようだ。エントランスの南には半分目隠しのようにスリット状の壁となっている。そこからの光が程よく当るのだ。

ナスタチウム・ミルクメイド
4月、新しい葉もかなり出た。かなり刈り込んだのにまだ隣が窮屈そうだ。

結局年を越え、厳冬期も乗り切った。もう3月にはわさわさ。さすがに周りの植物にも影響を与えるし、新芽も出して形を整えたいしと、半分ぐらいばっさり剪定。それでも4月にはいい葉が揃いはじめた。

さて、二年目を迎える。このまま今年も順調に育って欲しい。

こんな場所にはこのハーブ-カニングハムミント

当店のお庭作りでは、ミントの仲間を使うことは滅多にない。

ミントを地植えしたことがある方ならお分かりかもしれないが、周りの植物を圧倒するほどはびこったり、春、思わぬところからヒョッコリ地下茎の芽が出て来ることも多い。大抵「植えて後悔」のパターンだ。

まして、メンテナンスに訪れる周期が長いお庭等には怖くて使えない。

とはいえ、その強健さや成長の速さなどのメリットを生かさない手はない。このお家は、玄関の前の通路にカニングハムミントを使っている。

カニングハムミント
写真は昨年の暮れの状態なのでやや寒さで葉の色が褪せているところもあるが、もう植えてかれこれ10年近くになる。

元は中央の平たいステップの周りは玉砂利が敷き詰めてあったが、玉砂利の間から小さな雑草が生えて来て見た目が非常に良くなかった。北西向き、南側は建物なので(手前が西)、日中も比較的薄暗く、黒っぽい玉砂利がよけいに雰囲気を暗くしていたというのもあり、グラウンドカバーを植えることとなった。

元々日陰だし、冬はマイナス10度近くなる土地柄。なるべく手間もかからない種類ということでカニングハムミントに決定した。

夏はさすがに少し細かい草が生えるものの、それほど困るほどではない。むしろ渇水で雨が降らないとさすがに傷みやすい。夏は西日も結構差す場所だ。

手前側は車の車輪が載るため、徐々に薄くなってしまう。最初は時々補植していたが、改善はしないため、近年は割り切って無理なところはあきらめてもらうようにした。

右側の壁側にはリュウノヒゲがあるが、案外どちらも仲良く、自分のテリトリーを守っている感じだ。数年に一度、追肥を兼ねて植え替えをする程度で普段は全く肥料を与えないが、ちょうど良いようだ。剪定作業も、せいぜい左側の駐車スペースに伸びたのを整えるぐらいでほとんど不要。お客様はこのスペースの手入れは全くせずに済んでいる。

決してこれがベストとは思っていないが、まずまずうまくいっているので、他のものに変える勇気がないまま何年も過ぎている・・・。