ダブルパンチ

夏が終わると、暑さや蒸れで枯れたり、害虫被害の実態が明らかになることがよくある。夏の間はあまりの暑さで細かいところまで目が行き届かないことが多いというのが理由なのだが。

ラベンダーの試験栽培をしている畑も、8月下旬ごろからところどころ様子がおかしくなってきた。蒸れか、それとも大雨で根の深い部分が浸かってしまったか、はたまたコガネムシの幼虫による食害か・・・と推測していた。すぐに対処しようにも高温が続いているなかで掘り上げてしまうと、まだある復活の可能性を絶ってしまうことにもなりかねない。仕方なく涼しくなるのを待っていたのだが・・・。

朝、圃場を見てみるとラベンダーの畝のところにいくつも大穴が空いていた。いくつかの枯れた株が掘り起こされている。

ラベンダーの被害

あまりの被害の大きさにまさか、いよいよイノシシか?と呆然となった。少し離れたところに家庭用の菜園があるのだが、カブの小さな苗が倒されていた。

カブの苗
カブの苗も倒されていた

うーん、困ったな・・・と頭を抱える。まさか電気を流すような柵まではする必要はないのだが、被害が続くようでも困る。先日、出雲の親戚の山でとんでもない被害を見てきたばかりになおさら心配は募る。

イノシシ被害
出雲の山中。ススキが掘り倒されていて愕然となる。

だが、落ち着いて考えてみたら、全く被害の規模が違う。出雲の山中では、土砂災害か、それとも重機で掘り返したかと思えるほどイノシシが掘り返していた。

イノシシ被害
出雲の山中。栗の木の下が10メートル四方に渡って掘り起こされていた
イノシシ被害
作業用の通路も掘り返され、車が通れない。出雲の山中

ところが、この畑は被害はところどころ。もしイノシシならば菜園からラベンダーの畑まで大きな通り道でもできているはずなのにその間にある他のハーブ類は全く無事。

しかも、ラベンダーの畝ばかりに被害が集中している。

可能性を一つずつ消していくと、もうこれはアナグマしかいないと思い当たった。コガネムシの幼虫が大好物というアナグマ、実際に昨年の夏に圃場で目撃している。

アナグマ
昨年の夏、真昼間に現れたアナグマ
アナグマ
すぐ近くまでフラフラと歩くアナグマ

掘り上げられてしまったラベンダーの根をみるとまさにコガネムシの幼虫に食害されている感じだ。

ラベンダーの根
ラベンダーの根。細根はほとんどない

アナグマならせいぜいこの程度の穴しか掘らないだろうし、足跡もほとんど見えるか見えないかしかついていない。ビニールハウスの中で育苗しているポットも毎年コガネムシの幼虫の被害があるのだが、今年は少なかったのも関係しているかもしれない。

ラベンダーの株たちにはかわいそうなことをしたものだ。コガネムシに根をやられ、さらにアナグマに掘り起こされ。このダブルパンチにはせっかく乗り切れそうな夏も乗り切ることができなかったのだろう。

すぐ横ではモグラよけにと植えていたヒガンバナの球根から花茎が伸び初めていた。

庭仕事に同行

今日は久しぶりに庭仕事に出かけることになった。

もう20年近いおつきあいで庭づくりをさせていただいているお客様から、庭がすごいことになっているので少し手を入れて欲しいとの要請。今年前半は主に他のスタッフが出かけていたのだが、時には様子も見ておきたいので同行することにした。

今年の春はバラを中心にとても楽しめたと喜んでいただけたのが嬉しかった。何年も咲かずに「どうしてかしら」と言われ続けていた白花のモッコウバラもとてもよく咲いたというし、庭の奥のつるバラも絶好調だったという。更に、普段の年はところどころ咲くことが多いスイートブライアーローズも満開だったとのこと。ローズヒップの多さがそれを物語っている。確かにこんなにローズヒップがついているのは見たことがない。

スイートブライアーローズのローズヒップ
スイートブライアーローズのローズヒップ

つるバラの下はかなりのシェードになるため、日陰に耐えれるようにアカンサスモリスを植えているが、これも何本もの花茎の名残が枯れたまま残っていた。どうやら花の数も結構咲いたようだ。

アカンサスモリスの株元の新芽
アカンサスモリスの株元の新芽

夏を迎えると枯れてしまう大きな葉の株元から、小さな芽が顔を出していた。冬にかけてまたつやつやとした葉を広げてくれるだろう。もうこの場所はほとんど手を入れなくてもよくなった。バラの肥料も2年ほど前から与えていないが毎年よく咲くし、パープルペリウィンクルがびっしりと増えたので草取りも短時間で終わる。むしろ広がり過ぎたところをバサバサと刈り取るぐらいだ。

このお庭のお手入れは午前中でほぼ完了。午後は近所の別のお庭へ。お庭の中心には長年サンカクバアカシアが枝を広げ、春には明るい黄色で目を楽しませてくれていたが、幹におそらくテッポウムシが入ってダメになってしまった。かなり大きな株になっていたので、その場所が開いてしまうとあまりに寂しい感じになってしまった。広い庭なのでなおさらである。

今年の春、懇意にしている樹木医さんと相談して、ネグンドカエデのフラミンゴを定植した。春先、少し心配する時期もあったがどうやらうまく活着したようで、この夏も無事乗り切れそうだ。

ネグンドカエデ・フラミンゴ
ネグンドカエデ・フラミンゴ

ただ、一部の枝と葉に枯れが見られたので、すぐに樹木医さんに連絡。写真を撮って送ったらすぐに返事があり、枝をカミキリムシがかじった影響ではないかとの判断。樹木医さんもテッポウムシを心配しておられたのだが、株元をチェックしてもその気配はなく一安心。

ネグンドカエデ・フラミンゴ
一部の枝が枯れていた

よく見ると確かに枝の裏にカミキリムシがかじったような跡が残っていた。さすが樹木医さんである。もう少し冬に近づいた時どうなるかまた見にきたいところだが、さて、その時タイミングよく庭仕事に同行できるかどうかが問題である。

作業の途中、冷たい風が吹いてきたかと思ったら、急に土砂降りの雨が降り出した。雷も鳴りだし、真上に稲光も見える。しばし雨が止むまで作業中断。ここまで、とんでもない暑さだったのが、雨の後はずいぶん過ごしやすくなる。普段、1日の作業だと、最後の2時間ぐらいはどうしてもペースダウンしがちなのだが、今回はむしろペースアップしつつ終わりを迎えた。

夏を耐えたギンヨウボダイジュ

9月に入り、今日からしばらく気温が高くなりそうな予報が出ているが、せいぜい30度を少し超える程度で、着々と秋に向かいつつある感じがする。圃場の周りでも例年のように奥の山からミンミンゼミがおりてきて日中はかなり大きな声で鳴いているし、朝夕は草むらの虫の声も盛大になってきた。

夏の盛りを過ぎると花を咲かせるレウコジャム・オータムナーレ(レウコユム)も、満開になり、秋の風に花を揺らしている。今年も種子をたくさんつけ始めていてちいさいながら花壇で着実に勢力をひろめつつある。

昨年と大きく違うのはやはり梅雨明けが20日ぐらい遅かったこと。昨年は梅雨明けも早くそれからずっと雨が降らなかったので、ビニールハウス前のギンヨウボダイジュも秋を待たずに落葉してしまった。同じく、キウイも水やりをしていたのにも関わらず葉が全部落ちてしまった。

ギンヨウ菩提樹
昨年8月下旬のギンヨウボダイジュ。すでに左側がかなり葉が落ちているが、このあと葉が全ておちていった。

ところが、今年のギンヨウボダイジュは少し葉は傷んでいるものの、葉がしっかり残っている。キウイについては水やりもしなかったのだが、なんとか硬い葉が残っている。

ギンヨウ菩提樹
今年のギンヨウボダイジュ

葉が残って、日陰を作ってくれるのは嬉しいが、ひとつ残念なのはこの先紅葉せず、あまりぱっとしない茶色でカサカサの葉になって落ちてくること。

そのぶん、春の新芽は思わず頬が緩むほど綺麗な色を見せてくれるのでそこまで望むのは欲張りすぎか。