ラベンダーと雨粒

この頃多いゲリラ豪雨や土砂降りは御免だが、しっとりと降る雨を見ていると心のさざ波も静められ、しばし落ち着いた気分になる。雨を受け、喜んでいるように見える草花の姿もまた気分を和らげてくれるのだろう。

だが、花の咲いたラベンダーだけはなにやら可愛そうである。ラベンダーの花はどうも雨の日は似あわない。大雨が降って花穂が垂れるようになるとなおさら惨めだ。

グロッソラベンダー

このグロッソラベンダーも詰み時を迎えるというのに、濡れていてはドライにするにも難儀する。コモン(イングリッシュ)系はまだしも、ラバンディン系はちょうどこの辺りの梅雨の時期と重なる。去年など、収穫にベストなタイミングは一日しかなかったように思う。それに比べれば今年はまだましだったのかも知れない。

そのうち、雨が上がりかけ、待ちかねたかのようにマルハナバチがやってきて花にしがみつきはじめた。

マルハナバチに促されるようにまた仕事に戻ったのである。

人待ち顔のカエル

圃場の近所に幼稚園ぐらいの男の子がいる。行き帰りにであうと、時々手を振ってくれるフレンドリーな子だ。

彼は週に何度か、圃場の目と鼻の先にあるゴミ集積所におじいちゃんとごみ捨てにやってくる。そのとき、いつも水路の溜めマスのところで立ち止まり、何かを見ている。

こちらも気になって様子を窺いに行くと、ミドルサイズのウシガエル?がいらっしゃった。以来、毎朝、自分もなぜかこのカエルの様子が気になって溜めマスを覗くようになった。

ウシガエル?

近くの農家さんが置いている肥料袋(田んぼへの水引込調整用のようだ)がお気に入りなのか不思議といつも朝にはこの定位置にいらっしゃる。昼ごろになるとどこかへ消えて、また翌朝にはここにいる。

何をしているやら想像もつかないが、かの男の子がやってくるのを待っているのだろうか。そう思うとなにやら人待ち顔のようにも見えてくる。声はまだ聞かないので彼氏を待つメスなのかも知れない。それとも肥料袋のオジサンに恋をしているのか・・・

晴れの日も雨の日も

一棟のビニールハウスの前に、ネムノキが生えている。正確には、ある時、ビニールハウスの苗ポットにひょっこり生えてきたのでそのまま育苗して、この場所に植えたのだ。

ネムノキ

夏、入口に日陰を作ってくれるのを期待して、以後5.6年になるだろうか。過酷な場所で手入れもしなかったのに何とかここまで大きく成長。今年は剪定と若干の誘引をして概ね良い感じの日陰を提供してくれるようになった。冬はしっかり葉を落として陽の光を通してくれるのもありがたい。

ネムノキ

鑑賞するという点では雨の日の雰囲気が好ましい。雨粒をまとった繊細な花も良いし、しっとりと濡れた葉の様子もまた悪くない。晴れの日なら夕暮れ時。夕闇に浮かぶ花はなかなか良い感じである。日中はそれほどでも無いが、下の日陰を楽しむのである。

ネムノキ

じとじとする梅雨は嫌だが、この花を見ると少しは慰められるのである。

まるで拷問

夏の雑草はどれも広がり方が早い。中でもクズを筆頭に蔓性のものはたちが悪い。草刈機を使っても絡んでしまい、イライラが募る。

カナムグラもまた同じように夏の草刈りを阻止する蔓である。幸い今の圃場の周りでは見かけないのでありがたい。昔はかなりてこずらされた。

カナムグラと同属のホップもまた夏に苦労させられる植物である。カナムグラと見た目も、伸びようも良く似ているホップ。一度蔓がからむと、小さなトゲが引っ掛かってすんなりとは離れてくれない。まあ、そのおかげで色々なものに絡みやすくなっている。

ホップ
育苗している大苗は特に蔓の勢いも盛んで見る見るうちにとなりの株と蔓をからませる。さあ、注文が入った!と、苗をピックアップしようとしても、他のハーブのようにはいくわけが無い。蔓を傷めないように一つ一つほどいていかねばならない。夏の日差しがふりそそぐビニールハウスの中で、この作業はほとんど拷問に近い。汗は滴り落ち、メガネを曇らせ、さらに頭に血を上らせる。いっそ、蔓をバッサリ切ってしまいたい衝動に何度も駆られてしまう。

お願いです。ホップはまだ蔓の伸びがゆっくりしている頃に御注文御願いします。

こっちを向いて

お客様の依頼で庭作りをする時、しばしば希望があるのが目隠しという要望である。第三者から見ると、それほど気にしなくても・・・と思えるような場所でも、御本人にとっては案外気掛かりだったりするようだ。

このお庭も、南側が月極駐車場になっている。朝夕以外車の出入りは無いようだが、フェンスも高めに作られ、下の金網部分も植物で覆って欲しいとの御要望があった。

クレマチス、ブルーベルクリーパーフレンチラベンダーなどを手前に植えて、2年目には程よい目隠しができ上がった。

ブルーベルクリーパー

当初の目的は達成したものの、クレマチスが花をつけるのはほとんど駐車場側。フレンチラベンダーさえもフェンスを突き抜け、駐車場に向けて花を咲かせるようになってしまった。

「地域の景観向上に貢献していると思って・・・」
と弁護しつつも、駐車場側ばかり華やかなのを見るとさすがに心苦しい。

唯一ブルーベルクリーパーだけが家側に向けて花を咲かせてくれるので胸をなで下ろしている。最初はこの株も成長がゆっくりだったが、いったん成長を始めると一気に伸びて良い目隠しとなるとともに、ちょうど暑さが気になりはじめた頃に涼やかなブルーで目を楽しませてくれるようになった。

ブルーベルクリーパー

もちろん、お庭のオーナーにも大変好評だ。でも、この株の成長を一番喜んでいるのはきっと自分である。

惜しむらくは、なかなか増やしにくいこと。もっとたくさんの方に楽しんでいただければいいのだが、現在も育苗中だ。あと、物の本によると花の後の果実が食べられるとのことだが、今まで食べてみた経験では美味しくなかった。味を良くするコツとか食べ方があるのかも知れないが、???のままである。