菩提樹で出初め式

年が明けてから雨が降る日がなかったが、仕事始めは久しぶりの雨模様となった。

仕事始めと言っても、年末から水やりや片付けなど、細々とした仕事があるので久しぶりという感じは全くない。

朝、樹木医のMさんから連絡が入り、頼まれていたボダイジュの剪定に伺いたいとのこと。

この雨模様で剪定作業するなんて、新年から気合が入っているなぁ。と感心した。

この銀葉ボダイジュもビニールハウスの脇に植えてもう10年近くになるだろうか。夏はいい木陰を作ってくれるようになったが、さすがに大きくなりすぎた。しばらくは自分で剪定していたのだが、高所で太い枝を剪定するのは緊張するし、怖さのため、作業自体もついつい適当になってしまう。

数年前からMさんに依頼していたのだが、急な海外出張などもあり、結局は自分で行う年が続いた。なので、ようやく念願が叶いそうだ。幸先いい新年だ。

所用でビニールハウスから一旦離れ、戻ってきたらMさんが既に到着して10時のお茶中。ところが、今日は作業を諦めたという。こっちにきたらあまりに強い雨だったので断念したとのこと。安全第一なので無理は言えない。

お茶を飲みながら「本当はあまり剪定しないほうがいい」という話を聞く。強く剪定するとどうしても樹は反発して余計でも枝を伸ばそうとするとのこと。とは言え、周囲への配慮もあり、伸ばしっぱなしにするわけにもいかない。樹木医さんの腕を頼むよりほかはない。

結局午前中は作業は見送りとなったのだが、少し雨が落ち着いた夕方、Mさんがもう一度作業に現れた。残念ながら自分はいなかったのだが、スタッフが写真を残しておいてくれた。

雨の中この細い枝に登り、出初め式ばりのアクロバットで剪定作業をしていらしたとのこと。

やはりプロはすごい。

翌朝、圃場に着くと、大量の枝が剪定されて積まれていたのだが、樹を見るとそれほどではない。樹もきっと、あまり剪定されたと思わずに反発しないでいてくれると助かる。

さらに、樹木医さんから、「挿し木をするなら横に伸びようとする枝よりも、上に伸びようとする枝の方が、根を出しやすい」というアドバイスをいただく。早速剪定枝の中から真上に伸びたものを選んで挿し木を実行。このところあまり活着率が良くなかった原因の一つかもしれない。

出初め式は見れなかったが、やはり幸先いい新年になりそうだ。

香らない葉に潜む香り

10月とは思えない暖かい日が続いていたが、ようやく、朝夕はパーカでも着ないと体が冷えるようになってきた。

スイートバジル

畑の手入れをしていたら、目を疑うような光景が。スイートバジルの零れ種。近くに親になった大株があるので不思議ではないのだが、例年ほとんど零れ種は見ないか、見てもごく小さい双葉程度。ポット苗サイズまで育ったのは今年が初めてではないだろうか。このままどうなるか様子を見よう。

さて、この秋、下記のようなお問い合わせをいただいた。いままで何度か同じような質問があったが、ハーブの多くは触ると良い香りがするので、触っても強い香りを感じないスイートグラスは不思議に思われても当然だろう。

スイートグラスに香りがありません | ヘルプ・Q&A

結局のところ、甘く感じる成分であるクマリンは葉を乾かすことで生成される物質なので、生のままではよく香らないようだ。乾かして初めて香ってくる植物に、昔の人は神秘性を感じたのかもしれない。ホーリーグラスの別名があるのもそのためなのだろうかと思えてくる。

事実、育てているときも、香りや見た目ででなかなか判断しにくいので、雑草ではないかと不安になることが多い。そのため、現在は一部の試験栽培を除いては、鉢植えで管理している。

この秋、少し多めに収穫できたので、葉の香りが実際にどのように変わっていくのかを試してみた。

スイートグラス
生の葉。ほとんど香らない

収穫してすぐは、「そう言われれば甘い香りがするかも」という程度の微妙な香り。擦るとまだしも、鼻を近づけたぐらいでは青臭さの方が強いので、似たような雑草と比べたらきっとわからないだろう。

今回、日中エアコンがついている店内で乾燥させてみた。三日目ぐらいから甘い香りが漂い始め、乾燥から五日目、触るとカサカサと音を立てるようになったころには明らかに甘い香りが立ち始めた。

スイートグラス
乾燥5日目。甘い香りがしてくる。

さらに2~3日すると、2~3メートル離れたところでもやや気になるぐらいの強さになる。

ところが、乾燥から10日ちかくなるとまったく気にならなくなる。もちろん、鼻を近づけると香りはする。5日目以降のような強い香りの成分はすでに揮発してしまったのだろう。当たり前といえば当たり前のことなのだが。

スイートグラス
10日目。鼻を近づけないと香らない

この変化は育てて収穫・乾燥してみて初めてわかる。いままで、日数の経過による変化までは見ていなかったのでなかなか面白い経験だった。

スイートグラス、浄化用として使う場合は、火をつけて燻らせて煙を出す場合が多いのだが、きっと燻らせた場合でも乾燥の段階によってずいぶん香りも違うことだろう。次回収穫した時はこの辺りもぜひ試してみたいところだ。

また、スイートグラスの葉は、別名バイソングラスと呼ばれ、ポーランドのお酒であるズブロッカの瓶の中に入っている。

きっと製造現場でも乾燥具合を見極めて一番いいときにお酒に香りをつけるのだろう。

一時、この香りが気に入ってしばらくズブロッカを飲んでいたことがあった。

飲みながら

「ウォツカにスイートグラスを入れたらズブロッカになるんだろうな」

と思うのは自然な流れ。いつか試してみたいところだが、最適な乾燥具合を見つけた頃にはきっとアル中になっていることだろう。

ダブルパンチ

夏が終わると、暑さや蒸れで枯れたり、害虫被害の実態が明らかになることがよくある。夏の間はあまりの暑さで細かいところまで目が行き届かないことが多いというのが理由なのだが。

ラベンダーの試験栽培をしている畑も、8月下旬ごろからところどころ様子がおかしくなってきた。蒸れか、それとも大雨で根の深い部分が浸かってしまったか、はたまたコガネムシの幼虫による食害か・・・と推測していた。すぐに対処しようにも高温が続いているなかで掘り上げてしまうと、まだある復活の可能性を絶ってしまうことにもなりかねない。仕方なく涼しくなるのを待っていたのだが・・・。

朝、圃場を見てみるとラベンダーの畝のところにいくつも大穴が空いていた。いくつかの枯れた株が掘り起こされている。

ラベンダーの被害

あまりの被害の大きさにまさか、いよいよイノシシか?と呆然となった。少し離れたところに家庭用の菜園があるのだが、カブの小さな苗が倒されていた。

カブの苗
カブの苗も倒されていた

うーん、困ったな・・・と頭を抱える。まさか電気を流すような柵まではする必要はないのだが、被害が続くようでも困る。先日、出雲の親戚の山でとんでもない被害を見てきたばかりになおさら心配は募る。

イノシシ被害
出雲の山中。ススキが掘り倒されていて愕然となる。

だが、落ち着いて考えてみたら、全く被害の規模が違う。出雲の山中では、土砂災害か、それとも重機で掘り返したかと思えるほどイノシシが掘り返していた。

イノシシ被害
出雲の山中。栗の木の下が10メートル四方に渡って掘り起こされていた
イノシシ被害
作業用の通路も掘り返され、車が通れない。出雲の山中

ところが、この畑は被害はところどころ。もしイノシシならば菜園からラベンダーの畑まで大きな通り道でもできているはずなのにその間にある他のハーブ類は全く無事。

しかも、ラベンダーの畝ばかりに被害が集中している。

可能性を一つずつ消していくと、もうこれはアナグマしかいないと思い当たった。コガネムシの幼虫が大好物というアナグマ、実際に昨年の夏に圃場で目撃している。

アナグマ
昨年の夏、真昼間に現れたアナグマ
アナグマ
すぐ近くまでフラフラと歩くアナグマ

掘り上げられてしまったラベンダーの根をみるとまさにコガネムシの幼虫に食害されている感じだ。

ラベンダーの根
ラベンダーの根。細根はほとんどない

アナグマならせいぜいこの程度の穴しか掘らないだろうし、足跡もほとんど見えるか見えないかしかついていない。ビニールハウスの中で育苗しているポットも毎年コガネムシの幼虫の被害があるのだが、今年は少なかったのも関係しているかもしれない。

ラベンダーの株たちにはかわいそうなことをしたものだ。コガネムシに根をやられ、さらにアナグマに掘り起こされ。このダブルパンチにはせっかく乗り切れそうな夏も乗り切ることができなかったのだろう。

すぐ横ではモグラよけにと植えていたヒガンバナの球根から花茎が伸び初めていた。

庭仕事に同行

今日は久しぶりに庭仕事に出かけることになった。

もう20年近いおつきあいで庭づくりをさせていただいているお客様から、庭がすごいことになっているので少し手を入れて欲しいとの要請。今年前半は主に他のスタッフが出かけていたのだが、時には様子も見ておきたいので同行することにした。

今年の春はバラを中心にとても楽しめたと喜んでいただけたのが嬉しかった。何年も咲かずに「どうしてかしら」と言われ続けていた白花のモッコウバラもとてもよく咲いたというし、庭の奥のつるバラも絶好調だったという。更に、普段の年はところどころ咲くことが多いスイートブライアーローズも満開だったとのこと。ローズヒップの多さがそれを物語っている。確かにこんなにローズヒップがついているのは見たことがない。

スイートブライアーローズのローズヒップ
スイートブライアーローズのローズヒップ

つるバラの下はかなりのシェードになるため、日陰に耐えれるようにアカンサスモリスを植えているが、これも何本もの花茎の名残が枯れたまま残っていた。どうやら花の数も結構咲いたようだ。

アカンサスモリスの株元の新芽
アカンサスモリスの株元の新芽

夏を迎えると枯れてしまう大きな葉の株元から、小さな芽が顔を出していた。冬にかけてまたつやつやとした葉を広げてくれるだろう。もうこの場所はほとんど手を入れなくてもよくなった。バラの肥料も2年ほど前から与えていないが毎年よく咲くし、パープルペリウィンクルがびっしりと増えたので草取りも短時間で終わる。むしろ広がり過ぎたところをバサバサと刈り取るぐらいだ。

このお庭のお手入れは午前中でほぼ完了。午後は近所の別のお庭へ。お庭の中心には長年サンカクバアカシアが枝を広げ、春には明るい黄色で目を楽しませてくれていたが、幹におそらくテッポウムシが入ってダメになってしまった。かなり大きな株になっていたので、その場所が開いてしまうとあまりに寂しい感じになってしまった。広い庭なのでなおさらである。

今年の春、懇意にしている樹木医さんと相談して、ネグンドカエデのフラミンゴを定植した。春先、少し心配する時期もあったがどうやらうまく活着したようで、この夏も無事乗り切れそうだ。

ネグンドカエデ・フラミンゴ
ネグンドカエデ・フラミンゴ

ただ、一部の枝と葉に枯れが見られたので、すぐに樹木医さんに連絡。写真を撮って送ったらすぐに返事があり、枝をカミキリムシがかじった影響ではないかとの判断。樹木医さんもテッポウムシを心配しておられたのだが、株元をチェックしてもその気配はなく一安心。

ネグンドカエデ・フラミンゴ
一部の枝が枯れていた

よく見ると確かに枝の裏にカミキリムシがかじったような跡が残っていた。さすが樹木医さんである。もう少し冬に近づいた時どうなるかまた見にきたいところだが、さて、その時タイミングよく庭仕事に同行できるかどうかが問題である。

作業の途中、冷たい風が吹いてきたかと思ったら、急に土砂降りの雨が降り出した。雷も鳴りだし、真上に稲光も見える。しばし雨が止むまで作業中断。ここまで、とんでもない暑さだったのが、雨の後はずいぶん過ごしやすくなる。普段、1日の作業だと、最後の2時間ぐらいはどうしてもペースダウンしがちなのだが、今回はむしろペースアップしつつ終わりを迎えた。

夏を耐えたギンヨウボダイジュ

9月に入り、今日からしばらく気温が高くなりそうな予報が出ているが、せいぜい30度を少し超える程度で、着々と秋に向かいつつある感じがする。圃場の周りでも例年のように奥の山からミンミンゼミがおりてきて日中はかなり大きな声で鳴いているし、朝夕は草むらの虫の声も盛大になってきた。

夏の盛りを過ぎると花を咲かせるレウコジャム・オータムナーレ(レウコユム)も、満開になり、秋の風に花を揺らしている。今年も種子をたくさんつけ始めていてちいさいながら花壇で着実に勢力をひろめつつある。

昨年と大きく違うのはやはり梅雨明けが20日ぐらい遅かったこと。昨年は梅雨明けも早くそれからずっと雨が降らなかったので、ビニールハウス前のギンヨウボダイジュも秋を待たずに落葉してしまった。同じく、キウイも水やりをしていたのにも関わらず葉が全部落ちてしまった。

ギンヨウ菩提樹
昨年8月下旬のギンヨウボダイジュ。すでに左側がかなり葉が落ちているが、このあと葉が全ておちていった。

ところが、今年のギンヨウボダイジュは少し葉は傷んでいるものの、葉がしっかり残っている。キウイについては水やりもしなかったのだが、なんとか硬い葉が残っている。

ギンヨウ菩提樹
今年のギンヨウボダイジュ

葉が残って、日陰を作ってくれるのは嬉しいが、ひとつ残念なのはこの先紅葉せず、あまりぱっとしない茶色でカサカサの葉になって落ちてくること。

そのぶん、春の新芽は思わず頬が緩むほど綺麗な色を見せてくれるのでそこまで望むのは欲張りすぎか。